- コレステロール・中性脂肪が高いと指摘された方へ
- 脂質異常症について
- 脂質異常症の合併症
- コレステロール・中性脂肪が高くなる原因
- コレステロール・中性脂肪の値を下げる治療
- コレステロール・中性脂肪の目標値
- コレステロール・中性脂肪のよくある質問
コレステロール・中性脂肪が高いと指摘された方へ
コレステロールや中性脂肪は、体に必要な脂質ですが、増えすぎると血管に悪影響を与えます。LDL(悪玉)コレステロールは動脈硬化の原因になりやすく、HDL(善玉)はそれを防ぐ役割があります。中性脂肪もエネルギー源として重要ですが、過剰になると動脈硬化のリスクを高めます。健康診断でこれらの値が高いと「要指導」や「要受診」とされ、日本人の約30%が脂質の異常を指摘されています。自覚症状がないため放置されがちですが、放置すると心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患を引き起こす可能性があります。脂質の数値は体調や食生活の影響を受けることもありますが、高値が続く場合は、生活習慣の改善とあわせて医療機関での検査や治療が必要です。このページでは、脂質の働きや基準値、原因、改善のポイントについてわかりやすく解説しています。日々の健康管理にお役立てください。
コレステロールについて
コレステロールは、細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料となる脂質で、主に肝臓で作られます。体に必要な成分ですが、血中濃度が高くなりすぎると動脈硬化を進行させ、心疾患や脳卒中のリスクを高めます。コレステロールには主に2つのタイプがあります。
LDLコレステロール(悪玉)
LDLコレステロール(悪玉)は、コレステロールを肝臓から全身に運ぶ働きを持ちますが、多すぎると血管内にたまり、動脈硬化の原因になります。
HDLコレステロール(善玉)
HDLコレステロール(善玉)は、余分なコレステロールを血管から回収し、肝臓へ戻す役割があり、動脈硬化の予防に関与します。
健康を保つには、LDLの値を低く、HDLの値を高く保つことが重要です。
中性脂肪(トリグリセリド)について
中性脂肪(トリグリセリド)は、体を動かすためのエネルギー源として重要な脂質です。 食事からの脂質や糖質を材料に肝臓で合成され、使われなかった分は脂肪として蓄えられます。ただし、中性脂肪が増えすぎると、LDLコレステロール(悪玉)の増加やHDLコレステロール(善玉)の減少を招き、動脈硬化のリスクが高まります。中性脂肪もコレステロールも必要な成分ですが、過不足は血管に悪影響を及ぼすため、生活習慣の見直しと定期的な検査が大切です。
脂質異常症について
主にLDLコレステロール(悪玉)・HDLコレステロール(善玉)・中性脂肪(トリグリセリド)の値が基準から外れている場合に診断され、「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高中性脂肪血症」などの状態をまとめて「脂質異常症」と呼びます。これらの脂質は、細胞膜の構成やホルモン合成、エネルギーの貯蔵・供給などに関与する重要な成分ですが、過剰または不足があると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患のリスクが高まることが明らかになっています。脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、自分では気づきにくく、通常は健康診断や血液検査で偶然発見されることが多い疾患です。なお、脂質の値に異常がみられても、すぐに薬物治療が必要になるとは限りません。多くの場合、まずは食事の内容を見直したり、運動を取り入れたりするなど、生活習慣の改善を優先し、その経過をみながら必要に応じて治療方針が決定されます。
脂質異常症の基準値
脂質異常症の診断は、空腹時の血液検査によって行われ、以下のいずれか1項目以上に該当する場合に「脂質異常症」と判定されます。
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LDLコレステロール |
140 mg/dL以上 |
高 LDLコレステロール血症 |
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120~139 mg/dL |
境界域高LDLコレステロール血症 |
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HDLコレステロール |
40 mg/dL未満 |
低 HDLコレステロール血症 |
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Non-HDLコレステロール |
170 mg/dL以上 |
高 non-HDLコレステロール血症 |
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150〜169 mg/dL |
境界域高 non-HDLコレステロール血症 |
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トリグリセライド(中性脂肪) |
150 mg/dL以上 |
高トリグリセライド血症(空腹時) |
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175mg/dL以上 |
高トリグリセライド血症(随時) |
脂質異常症の合併症
動脈硬化(アテローム性動脈硬化)
アテローム性動脈硬化とは、血管の内側(内膜)にコレステロールや脂質が沈着し、血管壁が厚く硬く変化していく状態を指します。これは脂質異常症、とくにLDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪が高い状態が長く続くことで進行しやすくなります。このような変化が起こると、血管内腔が徐々に狭くなり、血流が悪くなるため、心筋梗塞や狭心症といった冠動脈疾患、また脳梗塞などの脳血管疾患のリスクが高まることが知られています。アテローム性動脈硬化は、多くの場合自覚症状がなく静かに進行するため、早期の予防と管理が重要です。
冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
冠動脈疾患とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を届ける冠動脈が狭くなったり、閉塞したりすることで血流が不足し、心筋が十分な酸素を受け取れなくなる状態を指します。この結果として、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症する可能性があります。脂質異常症の中でも、LDLコレステロールが高い状態(高LDLコレステロール血症)や、中性脂肪が高値の状態(高中性脂肪血症)は、冠動脈内に脂質がたまりやすくなり、動脈硬化の進行を促す要因とされています。特にLDLコレステロールは、血管内に粥状の脂質の塊(アテローム)を形成しやすく、冠動脈の内腔を狭める主な原因と考えられています。
脳血管疾患(脳梗塞・一過性虚血発作)
脂質異常症が長期間続くと、血中のLDLコレステロールや中性脂肪の値が高くなり、脳の血管に動脈硬化が起こることがあります。この動脈硬化が進行すると、血管内に脂質が蓄積し、血流が滞ったり血管が閉塞したりすることで、脳の組織が十分な酸素を受け取れなくなる可能性があります。その結果として、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの虚血性脳血管疾患を発症するリスクが高まります。特に頸動脈や脳動脈におけるアテローム性動脈硬化は、自覚症状がないまま静かに進行し、突然発症することがあるため、脂質異常症の早期発見と管理が重要です。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
脂質異常症の中でも、中性脂肪が慢性的に高い状態(高中性脂肪血症)が続くと、肝臓に脂肪が過剰に蓄積し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を発症するリスクがあります。NAFLDは、日常的に多量の飲酒をしていないにもかかわらず、肝細胞内に脂肪が沈着する疾患であり、国内でも患者数が年々増加しています。NAFLDが進行すると、肝臓に慢性的な炎症が生じ、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼ばれる病態へ進展することがあります。さらにNASHが悪化すると、肝線維症や肝硬変、場合によっては肝細胞がんに至る可能性もあるため、早い段階での対処が求められます。
高トリグリセリド血症性急性膵炎
中性脂肪(トリグリセリド)の値が非常に高い状態(高度な高中性脂肪血症)が持続すると、膵臓に炎症が生じることがあります。このような脂質の異常によって起こる膵炎は、高トリグリセリド血症性急性膵炎と呼ばれています。この疾患では、突然出現する激しいみぞおちの痛みを主な症状とし、吐き気、嘔吐、発熱などの消化器症状を伴うことが少なくありません。症状が強く現れた場合には、入院による治療が必要になることもあります。脂質異常症のうち、中性脂肪のコントロールが不十分な方ではこの疾患を発症するリスクが高くなるため、定期的な検査と早めの対応が重要です。
コレステロール・中性脂肪が高くなる原因
遺伝
LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を体内で適切に処理・排除するために必要な遺伝子に異常があると、生活習慣に大きな問題がない場合でも、脂質異常症を発症することがあります。このようなタイプの脂質の異常は、遺伝性脂質異常症と分類されます。代表的な疾患として知られているのが、「家族性高コレステロール血症(FH)」です。この疾患では、LDLコレステロールを肝臓で取り込む働きを担うLDL受容体の機能が先天的に低下または欠損しており、血中のLDLコレステロール濃度が著しく上昇します。家族性高コレステロール血症(FH)を発症している方は、10代や20代といった若年の段階から動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞などの心血管疾患を早期に発症するリスクが高くなることが特徴です。
生活習慣の乱れ
運動不足
運動習慣がない、または運動量が不足している場合、血中の中性脂肪が増加しやすくなり、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が低下する傾向がみられます。特に、有酸素運動の不足は脂質の代謝バランスに悪影響を及ぼし、脂質異常症の発症リスクを高める要因のひとつと考えられています。さらに、日常的な身体活動の不足は、内臓脂肪の蓄積やインスリン抵抗性の悪化にもつながるため、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の上昇や中性脂肪の過剰な合成を促進する可能性があります。
喫煙
喫煙は、血管の健康や代謝機能に悪影響を及ぼすだけでなく、血中脂質のバランスを崩す要因としても知られています。たばこの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素などの有害物質は、HDLコレステロール(善玉)の減少を招くとともに、LDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪の増加を引き起こす可能性があります。さらに、喫煙は血管内皮に障害を与え、血管のしなやかさや修復機能を損なうことから、動脈硬化の進行を早める原因となることがわかっています。とくに喫煙期間が長くなるほど、脂質異常症や動脈硬化性疾患の発症リスクが高まると報告されています。
過剰な飲酒
アルコールを多く摂取する習慣が続くと、血中の中性脂肪(トリグリセリド)濃度が高くなりやすいことがわかっています。なかでも、ビール、日本酒、甘味の強いカクテルなど、糖分を多く含む酒類を頻繁かつ多量に飲んでいる場合には、肝臓での中性脂肪の合成が活発になり、結果として高中性脂肪血症(高トリグリセリド血症)につながる可能性があります。さらに、体内でアルコールが代謝される過程で生成されるアセトアルデヒドやNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)といった物質は、脂肪の分解を抑制し、体内に脂肪をため込みやすくする作用があるため、肝臓の脂質代謝を乱す原因になると考えられています。過剰な飲酒は、中性脂肪の上昇だけでなく、LDLコレステロール(悪玉)の増加やHDLコレステロール(善玉)の減少にも影響を及ぼす可能性があるため、脂質のバランスを保つには、飲酒量を抑える、または禁酒することが望ましいとされています。
食生活の乱れ
カロリーの過剰摂取
日常的に摂取するエネルギー量が、身体の消費量を継続的に上回っていると、その余ったカロリーは体内で脂肪として蓄積されます。その結果として、血中の中性脂肪が増加しやすくなり、肥満や内臓脂肪の増加を介して脂質異常症のリスクが高まる可能性があります。
動物性脂肪の過剰摂取
バターや肉の脂身、ラードといった食品に多く含まれる飽和脂肪酸を過剰に摂取すると、血液中のLDLコレステロール(悪玉)が上昇しやすくなることが明らかになっています。さらに、動物性脂肪の多い食事は、動脈硬化を進行させるリスク要因となる可能性があります。脂質異常症の予防や改善を目指すには、飽和脂肪酸のとりすぎを控えるとともに、植物油や青魚などに豊富に含まれる不飽和脂肪酸(特にn-3系やn-6系)を意識して取り入れることが重要です。
糖質の過剰摂取
砂糖やブドウ糖、果糖などの糖質を多く含む食品や飲料を継続的に摂取していると、肝臓で中性脂肪が合成されやすくなり、血液中の中性脂肪(トリグリセリド)濃度が高くなることがあります。特に、清涼飲料水、スナック菓子、白米や食パンなどの精製糖質が多い食品を習慣的にとっている場合は注意が必要です。糖質の過剰摂取は、インスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」の原因にもなりやすく、それによって脂質の代謝にも悪影響を及ぼすことがあります。これらの変化が重なることで、脂質異常症を発症するリスクが高くなると考えられています。
肥満(内臓脂肪型肥満)
肥満は、血中のコレステロールや中性脂肪の異常と密接に関連しています。なかでも、腹部の内臓のまわりに脂肪が多く蓄積する「内臓脂肪型肥満」は、脂質の代謝機能に大きな影響を及ぼし、中性脂肪の値が上がりやすくなる一方で、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低下する傾向があります。さらに、肥満が進むと、体内でインスリンがうまく働かなくなる「インスリン抵抗性」が生じやすくなり、肝臓ではLDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪の合成が促進されることが知られています。こうした代謝の変化により、脂質異常症を引き起こすリスクが高まるだけでなく、動脈硬化の進行や心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患につながる危険性も増すと考えられています。
薬剤の影響
ある種の薬剤は、体内の脂質の代謝に影響を与えることがあり、その影響で脂質異常症を発症することがあります。このような薬剤性の脂質の異常では、LDLコレステロールや中性脂肪の上昇、またはHDLコレステロールの低下といった変化がみられる場合があります。脂質代謝に関与する可能性がある薬剤としては、降圧薬(特にβ遮断薬)、免疫抑制薬(例:ステロイド)、経口避妊薬、利尿薬、抗精神病薬などが挙げられます。これらの薬は、服用期間が長い場合や、個人の体質によって脂質の代謝に影響を及ぼすことがあるため、定期的に血液検査を行い、脂質の値をモニタリングすることが大切です。
疾患の影響
脂質異常症は、他の疾患の影響によって起こることがあります。このような場合には、続発性脂質異常症(あるいは二次性脂質異常症)と呼ばれます。たとえば、糖尿病や甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの分泌低下)、慢性腎臓病、ネフローゼ症候群、クッシング症候群などの内分泌疾患や腎疾患は、脂質の代謝に影響を及ぼすことがあります。これらの疾患があると、LDLコレステロールや中性脂肪の値が上昇したり、HDLコレステロールが低下することが確認されています。このような続発性脂質異常症の場合、まずは原因となっている疾患の診断と治療を行うことが大切であり、それにより脂質の異常が改善されることもあります。
コレステロール・中性脂肪の値を下げる治療
コレステロールや中性脂肪の値が高い状態が続いている場合には、脂質異常症の治療として、まずは食事や運動など生活習慣の改善から取り組むことが基本方針となります。
こうした方法でも数値の改善が十分に得られない場合には、薬物療法をあわせて行うことが一般的です。治療の内容は、動脈硬化のリスクや既往歴、脂質の異常の程度などを踏まえて、一人ひとりの状態に応じて段階的に調整しながら継続的に進めていくことが重要です。
生活習慣の改善
食生活の改善
コレステロールや中性脂肪の数値を改善するには、まず食事の内容を見直すことが基本となります。とくに、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む食品(たとえばバター、脂身の多い肉、揚げ物や市販の洋菓子などの加工食品)の摂取を控えることが重要です。一方で、青魚(サバ・イワシなど)に豊富なオメガ3脂肪酸や、ナッツ・アボカド・オリーブオイルに含まれる単不飽和脂肪酸などの良質な脂肪を積極的に取り入れることが推奨されています。これらは中性脂肪やLDLコレステロールの低下、HDLコレステロールの維持に役立つとされています。さらに、野菜や果物、豆類、全粒穀物に含まれる食物繊維や、ポリフェノールなどの抗酸化物質には、血中脂質の改善や動脈硬化の予防に寄与する働きがあると報告されています。日々の食事で栄養バランスを意識することが、脂質異常症の予防とコントロールにつながります。
運動
コレステロールや中性脂肪の数値を下げるには、適度な運動を日常的に続けることが効果的とされています。中でも、ウォーキングやサイクリングといった有酸素運動に加えて、負担の少ない範囲での筋力トレーニングも併せて行うことが望ましいとされています。こうした運動習慣は、体内のエネルギー消費を高めて体重管理に役立つだけでなく、血中脂質の改善にもつながります。具体的には、中性脂肪の低下、HDLコレステロール(善玉)の増加、インスリンの働きの改善などの効果が期待されます。そのため、継続しやすい内容で日常生活に取り入れやすい運動を習慣化することが、脂質の異常の予防・改善において重要です。
禁煙
たばこを吸うことは、コレステロールや中性脂肪の異常に影響を与える要因のひとつとされており、脂質異常症のリスクを高めることがわかっています。特に喫煙は、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減少させると同時に、LDLコレステロールの酸化を促進し、動脈硬化の進行を加速させる可能性があります。そのため、禁煙は脂質のバランスを整えるだけでなく、動脈硬化や心血管疾患の予防という観点からも、きわめて重要な対策のひとつです。脂質異常症の治療を進めるうえで、喫煙の習慣を見直すことは欠かせません。
薬物療法
脂質異常症の薬物療法には、コレステロールや中性脂肪のタイプ、合併症の有無、体質などに応じてさまざまな種類の薬剤が使い分けられます。以下では、主に使用される薬の種類とその特徴についてご紹介します。
スタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
スタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、肝臓でのコレステロールの合成を抑えることで、LDLコレステロール(悪玉)を効果的に下げる薬です。心筋梗塞や脳梗塞などの予防にも有効とされ、脂質異常症の治療では最も一般的に使われています。特に、LDLコレステロールが高い方や動脈硬化のリスクが高い方には、最初に検討される薬剤です。
フィブラート系薬剤
フィブラート系薬剤は、中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉)を下げ、HDLコレステロール(善玉)を増やす作用をもつ薬です。特に、中性脂肪が高い脂質異常症に対してよく使用されます。LDLを下げる効果はスタチンより弱いものの、ペマフィブラートのように脂肪肝の改善が期待される薬もあり、代謝異常や肝機能異常を伴う場合に有用とされます。
小腸コレステロール吸収阻害薬(エゼチミブなど)
小腸コレステロール吸収阻害薬は、腸でのコレステロール吸収を抑えて、LDLコレステロールを下げる薬です。代表的な薬剤にエゼチミブがあり、食事や胆汁に含まれるコレステロールの吸収を選択的に防ぎます。エゼチミブは単独でも効果がありますが、スタチンと併用することでさらにLDLコレステロールを下げることができ、スタチンの効果が不十分な場合や副作用がある方にも適しています。
EPA/DHA製剤(n-3系多価不飽和脂肪酸)
EPAやDHAといったn-3系多価不飽和脂肪酸は、青魚に多く含まれる成分で、血液を固まりにくくし、中性脂肪を減らす作用があります。LDLコレステロールの低下効果はやや弱いものの、特に高中性脂肪血症に対して有効とされています。また、EPA製剤は冠動脈疾患の再発リスクを減らす効果が、国内外の臨床研究で確認されています。
PCSK9阻害薬
PCSK9阻害薬は、LDLコレステロール(悪玉)を大きく下げる注射薬で、2〜4週に1回皮下注射で使用します。この薬は、スタチンで十分な効果が得られない場合や、家族性高コレステロール血症の方などに限って処方される薬であり、主に心血管リスクが高い方への追加治療として使われます。
コレステロール・中性脂肪の目標値
中性脂肪(トリグリセリド)は、空腹時150mg/dL未満が管理目標とされています。さらに近年は、非空腹時175mg/dL未満も基準として用いられ、これを上回ると「高中性脂肪血症」と診断されます。ただし、数値がやや高い場合でも、直ちに薬物療法が必要になるわけではなく、まずは食事改善や運動習慣の確立といった生活習慣の見直しが基本的な対応となります。
なお、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の管理目標は、動脈硬化リスクの程度に応じて次のように設定されています。
- 低リスク群(基礎疾患なし):160mg/dL未満
- 中リスク群(高血圧・喫煙歴など):140mg/dL未満
- 高リスク群(糖尿病・冠動脈疾患・慢性腎臓病など):120mg/dL未満
- 超高リスク群(心筋梗塞などの既往あり):70mg/dL未満
また、非HDLコレステロール(総コレステロール-HDLコレステロール)も補助的に用いられ、特に中性脂肪が高い場合にはリスク評価に役立ちます。
一方、HDLコレステロール(善玉コレステロール)は40mg/dL以上が望ましく、これを下回ると動脈硬化のリスクが高まります。改善には禁煙、有酸素運動、体重管理、野菜や魚を中心とした食生活が有効です。
コレステロール・中性脂肪のよくある質問
LDLコレステロール(悪玉)を下げるためにはどうしたらよいですか?
LDLコレステロールを下げるためには、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を減らし、青魚やオリーブオイルに含まれる不飽和脂肪酸を積極的に取り入れる食生活が基本となります。加えて、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を継続すること、そして禁煙も重要です。これらの生活習慣の改善で十分な効果が得られない場合には、スタチン系薬剤を中心とした薬物治療が検討されます。LDLコレステロールの目標値は、動脈硬化の危険度に応じて100〜160mg/dL未満の範囲で設定されます。
中性脂肪を下げるにはどうしたらよいですか?
中性脂肪を下げるためには、糖質やアルコールの摂取を控え、継続的な運動習慣を取り入れることが有効です。 特に、砂糖を多く含む清涼飲料水やスイーツ、ビール・日本酒といった糖質を含むお酒の摂りすぎには注意が必要です。こうした生活習慣の見直しでも中性脂肪の値が改善しない場合は、フィブラート系薬やEPA(エイコサペンタエン酸)製剤などの薬物療法が検討されることがあります。 一般的に、中性脂肪の管理目標は150mg/dL未満とされています。
いつ治療を始めればいいですか?
健康診断でLDLコレステロールが140mg/dL以上、中性脂肪が150mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満と指摘された場合、まずは生活習慣の改善を始めましょう。改善が見られない、または動脈硬化のリスクが高い場合は医療機関での治療が必要です。
脂質異常症の自覚症状はありますか?
脂質異常症の多くは、初期にはこれといった自覚症状がありません。 そのため、気づかないうちに動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患で初めて判明することもあります。こうした事態を防ぐには、症状がなくても定期的に健康診断を受け、血液中の脂質の異常を早期に見つけることが大切です。
脂質異常症は完治しますか?
脂質異常症は、「完治する」疾患ではなく、生活習慣の改善や薬でコントロールし続けることが基本です。特に家族性高コレステロール血症(FH)のような遺伝性の場合は、生涯にわたる管理が必要です。一方、食事・運動・飲酒などの生活習慣が原因であれば、改善によって正常値に戻ることもあります。自覚症状がないまま進行することが多く、動脈硬化を通じて心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクがあるため、定期的な検査と継続的な管理が重要です。
瘦せていても脂質異常症になりますか?
はい、痩せていても脂質異常症になることはあります。遺伝的要因、運動不足、偏った食事、喫煙などが原因となるため、体型にかかわらず注意が必要です。特にLDLコレステロールや中性脂肪が高くても自覚症状がない場合が多いため、痩せている方も定期的な血液検査でのチェックが大切です。
