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1型糖尿病

1型糖尿病とは

1型糖尿病とは、膵臓にあるインスリンをつくるβ細胞が破壊されることで、インスリンの分泌がほとんど行われなくなり、高血糖が続く疾患です。1型糖尿病は糖尿病全体の約5%を占めており、主に小児期や若年層で発症することが多いのが特徴です。喉の渇きや尿の量が増える、体重が急に減るといった症状が短期間で現れ、そこで異変に気づかれるケースが一般的です。生活習慣が主な要因である2型糖尿病とは異なり、1型糖尿病は自己免疫の異常などによって発症し、治療には毎日のインスリン補充が必要となります。


1型糖尿病の原因

自己免疫反応

1型糖尿病の最大の原因は、自己免疫による膵臓β細胞の破壊です。本来、免疫はウイルスや細菌などを攻撃しますが、誤って自分の膵臓のβ細胞を標的としてしまいます。その結果、インスリンを分泌できなくなり、血糖値を正常に保てなくなります。

遺伝的要因

家族に1型糖尿病の患者がいると発症リスクが高まります。特にHLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる免疫に関わる遺伝子の型が影響すると知られています。ただし、遺伝だけで必ず発症するわけではなく、他の要因と組み合わさることが多いです。

環境要因

風邪などのウイルス感染(コクサッキーウイルスなど)が引き金となり、自己免疫反応を誘発することがあります。また、生活習慣や食事、ビタミンD不足などもリスク要因として研究されています。

その他の要因

妊娠中や出生後の早期における栄養(母乳の有無や牛乳タンパクの摂取など)、腸内環境の違いも関与する可能性が示唆されています。ただし、明確に因果関係が証明されているものは少なく、研究が続けられています。


1型糖尿病の種類

劇症1型糖尿病

劇症1型糖尿病は、発症からおよそ1週間以内にインスリン治療が必要になるほど、急速に病状が進行するタイプです。インスリンの補充が適切に行われない場合、糖尿病性ケトアシドーシスなどの重篤な状態に陥る可能性が高まります。このタイプの1型糖尿病は進行が極めて早いため、発症直前に検査を受けた場合でも、HbA1cの値が低めに出ることが多いです。

急性発症1型糖尿病

急性発症1型糖尿病は、1型糖尿病の中で最も一般的に見られるタイプで、発症から数ヵ月以内にインスリン治療が必要となるのが特徴です。発症後しばらくは、体内にわずかに残っているインスリンの作用によって血糖コントロールが一時的に安定する「ハネムーン期」と呼ばれる期間がみられることがあります。しかし、この期間が過ぎると、自力でのインスリン分泌がほとんどできなくなり、継続的なインスリン補充が不可欠になります。

緩徐進行1型糖尿病

緩徐進行1型糖尿病は、インスリンの分泌機能が徐々に低下していくタイプの1型糖尿病です。発症してすぐの段階では、2型糖尿病のようにインスリン注射を行わなくても血糖値の管理が可能なことがあります。しかし、時間の経過とともにインスリンの分泌がさらに低下し、半年から数年かけて血糖値が徐々に上昇していきます。このような場合、血糖値を下げる内服薬は膵臓への負担が大きくなる可能性があるため、膵臓の機能を守る目的で、早い段階からインスリン療法を行うことが推奨されます。


1型糖尿病の症状

  • 吐き気を感じる
  • 嘔吐する
  • 強い喉の渇きを覚える
  • 水分を多くとる(多飲)
  • 尿の回数や量が増える(多尿)
  • 全身のだるさ(倦怠感)
  • 体重が急に減少する

小児の場合、夜尿(おねしょ)がみられることもあります。
また、発症前に発熱や風邪のような症状を伴うケースも少なくありません。


1型糖尿病の診断基準

種類

診断基準

劇症1型糖尿病

・尿中ケトン体が陽性、または血中ケトン体の上昇が認められる

・発症前に耐糖能異常(糖尿病や境界型)がない場合において、血糖値が288mg/dL以上かつHbA1cが8.7%未満

・尿中Cペプチドが10μg/日未満、または空腹時血中Cペプチドが0.3ng/mL未満かつグルカゴン負荷後の血中Cペプチドが0.5ng/mL未満

急性発症1型糖尿病

・膵島関連自己抗体(例:GAD抗体やIA-2抗体など)が陽性

・自己抗体が陰性であっても、内因性インスリンの分泌が著しく低下している

※診断が難しい場合は、一定期間をおいて再評価を行います。

緩徐進行1型糖尿病

・経過の中で、GAD抗体やICA(膵島細胞抗体)などの自己抗体が陽性


1型糖尿病の検査

1型糖尿病の診断では、いくつかの検査を組み合わせて行います。まず血糖値を測定し、空腹時や食後の値が高いかを確認します。さらに過去1~2ヵ月の血糖コントロールを反映するHbA1cを調べ、6.5%以上であれば糖尿病の可能性が高くなります。自己免疫の関与を調べるためには、抗GAD抗体や抗IA-2抗体などの自己抗体検査を行います。また、膵臓からどれだけインスリンが分泌されているかを評価するためにCペプチド検査が用いられ、1型糖尿病では値が低下することが多いです。加えて尿検査で糖やケトン体を確認し、重症度を把握します。必要に応じてHLA遺伝子などの検査を行うこともありますが、一般的な診断では必須ではありません。これらの検査を総合的に判断して、1型糖尿病の診断が行われます。


1型糖尿病の治療

1型糖尿病の治療では、膵臓からのインスリン分泌が著しく低下または消失しているため、外部からインスリンを補う「インスリン療法」が基本かつ中心的な治療となります。さらに、血糖値を良好に保つためには、インスリン療法に加えて、食事療法や運動療法をバランスよく取り入れることが重要です。

薬物療法(インスリン療法)

1型糖尿病では、体内でインスリンが作られなくなるため、外からインスリンを補う治療が必要です。特に劇症型や急性発症型では、インスリンが欠かせず、補充しないと命に関わる危険があります。インスリンは通常、自己注射で行います。当院では、日本糖尿病学会糖尿病専門医が自己注射の方法や注意点を丁寧にご説明しています。ご不明な点があれば、どうぞご相談ください。

食事療法

1型糖尿病の食事療法では、日常生活に無理なく取り入れられる継続可能な食事内容を組み立てることが大切です。年齢や性別、日々の運動量などを踏まえて、適正なエネルギー量を設定し、栄養バランスの整った食事を基本とします。当院では、日本糖尿病学会糖尿病専門医と管理栄養士が連携し、患者様一人ひとりの状態や生活スタイルに応じた食事プランをご提案しています。

運動療法

1型糖尿病の運動療法では、ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動が基本となります。これに加えて、筋力の維持や基礎代謝の向上を目的に、レジスタンス運動(筋力トレーニング)を取り入れることもあります。


1型糖尿病に関するよくある質問

1型糖尿病を発症しやすいのは、どのような方ですか?

1型糖尿病は、主に免疫の異常によって発症するため、特定の体質や行動によって発症しやすくなるわけではありません。そのため、生活習慣の影響が大きい2型糖尿病とは異なり、食事や運動といった生活習慣が発症に直接関係することはほとんどありません。発症年齢は、小児から思春期(青年期)にかけてが中心ですが、まれに成人以降に発症するケースもあります。

1型糖尿病と診断されても、妊娠や出産は可能ですか?

1型糖尿病と診断された方でも、妊娠や出産は可能です。
ただし、妊娠中は高血糖による合併症や胎児への影響が起こるリスクがあるため、血糖値を適切に管理することが重要です。

1型糖尿病は、どのような経過をたどる疾患ですか?

1型糖尿病は、インスリンがほとんど分泌されなくなることで血糖値が高くなる疾患です。適切な治療と血糖管理を続けることで、糖尿病でない方と同様に日常生活を送ることが可能です。ただし、血糖コントロールが不十分な状態が続くと、網膜症や腎症、神経障害などの合併症を引き起こすことがあります。また、動脈硬化や認知症、がんなどのリスクにもつながるため、継続的な管理が重要です。

1型糖尿病でも、2型糖尿病と同じように食事療法や運動療法は必要ですか?

1型糖尿病では、日々の食事や運動の習慣が乱れていると、インスリン療法だけでは血糖値の調整が難しくなり、低血糖を引き起こすことがあります。一方で、すでに規則正しい食生活や適度な運動習慣が身についている方は、生活習慣の見直しを大きく行わずとも、インスリン療法による血糖管理がスムーズに行える場合があります

インスリン注射は痛みを感じますか?

インスリン注射は、ほとんど痛みを感じることはありません。使用する針は、一般的な予防接種で使用する針よりも細く、皮膚の浅い部分に打つため、多くの方が「痛みを感じなかった」と話されています。当院では、注射の方法について一人ひとりの状況に応じて丁寧にご説明し、安心して自己注射ができるようサポートしています。