尿酸値が高いと指摘された方へ
健康診断で「尿酸値が高いですね」と言われ、不安を感じた方も多いのではないでしょうか。尿酸は、プリン体の分解によって体内にできる物質で、通常は尿として排泄されます。ところが、作られる量が多かったり、うまく排泄できなかったりすると、血液中の尿酸値が上昇し、痛風や尿路結石、腎機能の低下といった合併症を引き起こすおそれがあります。さらに、高尿酸血症は、メタボリックシンドロームや生活習慣病との関連性も明らかになっており、症状がなくても注意が必要です。このページでは、尿酸やプリン体の基礎知識から、高尿酸血症の診断基準、合併症、原因、治療や予防法までをわかりやすく解説しています。尿酸値が気になる方にとって、今後の健康管理の参考になれば幸いです。
尿酸について
尿酸は、体内で細胞が代謝・分解される過程で生じるプリン体という物質から作られる老廃物(代謝産物)です。通常、尿酸は血液中を流れ、腎臓を経て尿として体外へ排出されます。しかし、尿酸の生成が過剰になったり、排泄がうまくいかなくなったりすると、血中の尿酸値が上昇します。この状態は「高尿酸血症」と呼ばれ、放置すると痛風や腎機能障害などの合併症を招くことがあります。
プリン体とは
プリン体は、DNAやRNAなどの核酸を構成する成分で、すべての細胞に存在する生体内物質です。体内では古くなった細胞の分解にともなってプリン体が生じ、それが尿酸に変わります。プリン体は食品にも含まれており、特にレバー、白子、魚卵、干物、ビールなどに多く含まれています。ただし、体内の尿酸の約8割は、食事由来ではなく体内で自然に作られるプリン体が由来とされています。そのため、プリン体を多く含む食品を控えることは尿酸値の管理に役立ちますが、食事制限だけでは不十分なこともあり、生活習慣全体の見直しが重要です。
高尿酸血症について
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が基準値(7.0mg/dL)を超えた状態を指します。8.0mg/dLを超えると、痛風や尿路結石、腎障害などの合併症リスクが高まり、薬による治療が検討されることもあります。この疾患は男性に多く見られますが、これは女性ホルモン(エストロゲン)に尿酸の排泄を促す作用があるためです。女性は尿酸値が上がりにくい傾向がありますが、閉経後はホルモンの分泌が減少するため、女性でも尿酸値が上がりやすくなります。
高尿酸血症の合併症
痛風
高尿酸血症の状態が続くと、血液中の尿酸が関節内に漏れ出し、結晶化することがあります。この尿酸塩の結晶が関節に沈着し、体の免疫細胞(白血球)がそれを異物とみなして攻撃することで炎症が生じ、急性の関節炎を引き起こす疾患が「痛風」です。尿酸値が高くても、ただちに症状が現れるわけではありません。多くの場合、自覚症状のない「無症候性高尿酸血症」の状態が長く続いた後に、尿酸結晶が関節に蓄積し、強い痛みを伴う「痛風発作」へとつながります。痛風関節炎は、特に足の親指の付け根(第1中足趾関節)に起こりやすいことで知られており、赤く腫れて熱を持ち、激しい痛みを感じるのが特徴です。
尿酸結石
体内でつくられた尿は、腎臓から尿管を通って膀胱に運ばれ、一時的に蓄えられた後に尿道を通じて体外へ排出されます。高尿酸血症の状態が続くと、尿中の尿酸濃度も高くなり、尿酸が結晶化して結石(尿酸結石)を形成することがあります。このようにしてできた結石が尿の通り道をふさぐと、尿路結石症と呼ばれる状態になります。結石は生じる部位によって名称が異なり、腎臓にできたものは「腎結石」、尿管にできたものは「尿管結石」、膀胱にできた場合は「膀胱結石」と呼ばれます。尿酸結石は、酸性の尿が続くと形成されやすく、脱水や高尿酸値がリスク要因とされています。
高尿酸腎症
高尿酸腎症とは、血中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くことで、腎臓の機能が徐々に低下していく疾患です。この腎機能障害は主に2つの経路から進行すると考えられています。ひとつは、尿酸が腎臓内に結晶として沈着することによるものです。尿酸が過剰になると、腎臓の尿細管や周囲の組織に尿酸塩の結晶がたまり、これが慢性的な炎症や組織の線維化(硬化)を引き起こします。このような変化が繰り返されることで、腎臓のろ過機能が徐々に低下していきます。もうひとつは、尿酸が腎臓の血管に与えるダメージです。尿酸は血管の内側(内皮細胞)に酸化ストレスを与え、血流の低下や血圧の上昇を引き起こす要因になります。血流が悪くなると、腎臓に届く酸素や栄養が不足し、さらに腎機能が損なわれていきます。これらの影響が重なることで、老廃物の排泄が不十分になり、慢性腎臓病(CKD)へと進行する可能性もあります。高尿酸血症に自覚症状がなくても、腎臓への負担は徐々に進むため、早期からの尿酸値管理が重要です。
尿酸値が高くなる原因
健康な人の体内では、1日あたり約600〜700mgの尿酸が生成され、ほぼ同量が尿や便を通じて体外に排泄されることで、血液中の尿酸濃度(尿酸値)は一定に保たれています。また、体内には常におよそ1,200mg前後の尿酸が蓄えられており、この蓄積分は「尿酸プール」と呼ばれます。尿酸値は、体内での尿酸の産生量と排泄量のバランスによって維持されていますが、このバランスが崩れると、尿酸が血中にたまりやすくなり、高尿酸血症の状態に陥ります。尿酸値の上昇には、高カロリー・高プリン体の食事、アルコール摂取、ストレス、肥満、脱水、腎機能の低下などが関与しており、複数の要因が重なることでリスクが高まると考えられています。
遺伝
高尿酸血症の原因のひとつに、先天的に腎臓の尿酸排泄機能が弱い体質が挙げられます。
特に、親や兄弟などに痛風の人がいる場合は、尿酸値が高くなりやすく、高尿酸血症のリスクも上がる傾向があります。このような家族歴はリスク評価において重要な要素となるため、身内に該当する方がいる場合は、早めに尿酸値を確認し、生活習慣の見直しなど予防に努めることが大切です。
食生活の偏り
尿酸値が上昇する原因のひとつに、食生活の偏りがあります。なかでも、プリン体を多く含む食品を多量に摂ることや、果糖の過剰摂取が尿酸値の上昇と関連しています。プリン体は、レバーや白子、魚卵、干物、脂身の多い肉類などに多く含まれており、こうした食品を頻繁に食べると、体内での尿酸の生成量が増える傾向にあります。さらに、果糖を豊富に含む清涼飲料水や甘い菓子類の摂りすぎにも注意が必要です。果糖は肝臓で代謝される際に、尿酸が副産物としてつくられるため、摂取量が多いと尿酸値の上昇を招くことが明らかになっています。
過剰な飲酒
過剰な飲酒は、尿酸値の上昇に深く関わっています。アルコールは、尿酸の生成を促すと同時に排泄を妨げるため、尿酸値が上がりやすくなります。特に、アルコール代謝によって生じる乳酸が尿酸の排泄を抑えることで、体内に尿酸が蓄積しやすくなります。また、ビールはプリン体を多く含むため、尿酸の産生量自体も増加します。さらに、アルコールには脱水を引き起こす作用があり、尿酸が濃縮されて高尿酸血症のリスクが高まります。このように、飲酒は尿酸の「作られすぎ」と「排出されにくさ」の両面で影響を及ぼすため、尿酸値を管理するうえで飲酒習慣の見直しが大切です。
肥満
肥満の中でも、内臓に脂肪が蓄積するタイプ(内臓脂肪型肥満)は、尿酸値の上昇と密接な関係があります。体脂肪が増加すると、体内でプリン体の分解が活発になり、その結果として尿酸の生成量が増えやすくなります。さらに、肥満によって起こりやすいインスリン抵抗性(インスリンの効果が低下した状態)、腎臓からの尿酸の排泄を阻害するため、尿酸が体内に蓄積しやすくなります。このように、肥満は尿酸の「作られすぎ」と「排出されにくさ」の両面で関与し、高尿酸血症の主な要因のひとつとされています。また、これらの代謝異常はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)にも共通して見られるものであり、尿酸値を適切に管理するには、体重、血糖、血圧、脂質といった指標を包括的に整えることが重要です。
薬の影響
特定の医薬品には、副作用として血液中の尿酸値を上げる可能性があるものがあります。なかでも、チアジド系やループ系の利尿薬、および一部の抗結核薬(ピラジナミド、エタンブトール)などが知られています。現在服用している薬が尿酸値の上昇に関係しているかもしれないと感じた場合でも、ご自身の判断で薬の服用を中止するのは避けましょう。安全に対応するためには、必ず医師または薬剤師に相談し、必要があれば専門的な判断のもとで薬剤の変更や調整を行ってもらうことが大切です。
腎機能の低下
腎機能が低下すると尿酸をうまく排泄できず、血中に蓄積しやすくなります。特に慢性腎臓病(CKD)などで腎機能の低下が続くと、尿酸値が上がりやすくなるほか、高尿酸の状態が腎臓にさらに負担をかけ、悪循環を生むこともあります。腎機能の低下は、尿酸値上昇の主要な原因のひとつであり、予防には腎臓の健康維持と定期的な検査が大切です。
尿酸値を下げる治療
生活習慣の改善
プリン体を多く含む食品を控える
尿酸値を下げるには、プリン体を多く含む食品の摂取を控えることが大切です。プリン体は体内で分解されて尿酸となるため、とりすぎると尿酸値の上昇につながります。特に、鶏・豚・牛のレバー、さんまの干物、まあじ、まいわし、煮干し、鰹節、干し椎茸などはプリン体が多く含まれるため、食べ過ぎに注意が必要です。なお、尿酸の多くは体内で自然に生成されるプリン体から作られるため、食事だけを厳しく制限する必要はありません。高プリン体食品を意識して控える程度が現実的です。
アルコール摂取量を見直す
尿酸値を適正に保つためには、アルコールの種類にかかわらず、飲酒量を見直すことが重要です。アルコールを摂取すると、体内での代謝により尿酸の生成が促進されるうえ、腎臓からの尿酸の排泄も妨げられるため、尿酸が体内にたまりやすくなります。このように、アルコールは尿酸の「つくられすぎ」と「出にくさ」の両方に関与するため、過剰な飲酒は高尿酸血症のリスクを高める要因となります。特に、ビールにはプリン体が多く含まれており、尿酸の生成をさらに促進するため注意が必要です。尿酸値を下げるには、飲酒の内容や量を含め、生活習慣全体を見直すことが大切です。
摂取カロリーを制限する
尿酸値を下げるには、摂取カロリーの見直しが重要です。肥満になると、プリン体の代謝が活発になり、尿酸の生成が増えるため、高尿酸血症のリスクが高まります。体重を減らすには、食事からのカロリー摂取を抑え、運動でエネルギー消費を増やすことが効果的です。無理のない制限を行うためには、自分に合ったカロリーの目安を知ることが大切です。適切なカロリー管理は、肥満の予防・改善とともに、尿酸値のコントロールにも役立ちます。
こまめに水分を補給する
尿酸値を下げるには、こまめな水分補給で尿量を確保し、尿酸を体外へ排出しやすくすることが大切です。目安として、1日あたり2リットル以上の水分摂取が推奨されています。水や麦茶など、糖分やアルコールを含まない飲み物を選ぶようにしましょう。一方で、牛乳や甘い清涼飲料、アルコール類は尿酸値を上げる可能性があるため、水分補給の目的には適しません。
有酸素運動
尿酸値を下げるには、有酸素運動を継続することが効果的です。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどは、体に負担が少なく、長時間続けやすい運動であり、脂肪燃焼を促して肥満の改善につながります。肥満が解消されると、尿酸の過剰な生成が抑えられ、尿酸値の安定に役立ちます。特に、少し息が弾む程度の中等度の運動が適しているとされています。一方、短距離走や過度な筋トレなどの無酸素運動は、尿酸値を一時的に上げることがあるため、注意が必要です。
薬物療法
尿酸生成抑制薬
尿酸生成抑制薬は、肝臓でプリン体が尿酸へと代謝される経路を抑制することによって、体内で尿酸が過剰に作られるのを防ぐ薬です。高尿酸血症には大きく分けて、尿酸の生成が過剰な「産生過剰型(腎負荷型)」と、腎臓からの排泄が不十分な「排泄低下型(腎排泄型)」があります。このうち、尿酸生成抑制薬は、主に尿酸の産生が多い腎負荷型の患者に対して使用されることが一般的です。また、すでに尿路結石がある方や、腎機能に障害を伴う場合にも、腎臓への負担を避ける目的から、尿酸の排泄を促す薬剤よりも、この尿酸生成抑制薬が優先されることが多くなります。
尿酸排泄促進薬
尿酸排泄促進薬は、腎臓に作用して尿中への尿酸の排出を高めることで、血液中の尿酸濃度を下げる薬です。この薬は、腎臓からの尿酸の排泄機能が低下し、体内に尿酸がたまりやすくなっている「排泄低下型(腎排泄型)」の高尿酸血症に対して、主に処方されます。ただし、尿中に排出される尿酸量が増えることで、尿路結石ができやすくなる可能性があるため、服薬中はこまめに水分を摂ることが重要です。また、尿をアルカリ性に保つことで結石の形成を防ぐ目的で、「尿アルカリ化薬」が併用されることもあります。
尿アルカリ化薬(尿路結石症の予防薬)
尿アルカリ化薬は、尿をアルカリ性に保つことで尿酸の溶解性を高め、尿路結石の予防や治療に用いられる薬剤です。この薬は、尿のpH(酸性度)を上昇させる作用があり、尿酸が酸性環境で結晶化しやすいという特性に着目して使用されます。その結果、尿酸が結石となるのを防ぐ効果が期待できます。特に、尿酸排泄促進薬の服用により尿中の尿酸濃度が高まると、尿路結石のリスクが上昇する可能性があるため、こうしたケースでは尿アルカリ化薬が併用されることがあります。ただし、尿をアルカリ性にしすぎると、今度はリン酸カルシウムなど他の種類の結石ができやすくなるおそれがあるため注意が必要です。そのため、医師の指導のもと、定期的に尿pHを測定しながら適切に管理することが重要です。
尿酸値のよくある質問
尿酸値がいくつから病院に行った方が良いですか?
一般的に、血液中の尿酸濃度が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断されます。この段階では症状が現れないことも多いですが、尿酸値が8.0mg/dLを超えると、痛風や尿路結石、腎機能の低下などの合併症リスクが明らかに高まるため、医療機関での相談が推奨されます。特に、ご家族に痛風を発症した方がいる場合や、健康診断で繰り返し高尿酸値を指摘されている方は、将来的なリスクが高いため注意が必要です。早めに受診し、生活習慣の見直しや必要な検査を受けることが、合併症の予防につながります。
高尿酸血症は完治しますか?
高尿酸血症は、食事や運動などの生活習慣を整え、必要に応じて薬を使うことで、尿酸値を適切に管理することが可能な疾患です。ただし、完全に治して尿酸値が自然に正常化するというよりも、「尿酸値を基準範囲内に維持し続けること」が治療の目的となります。このように、継続的にコントロールすることで、痛風発作や腎機能の低下といった合併症を予防することが期待されます。
尿酸値は水分不足と関係がありますか?
はい、体内の水分が不足すると、尿酸値が上昇しやすくなります。脱水状態では尿の量が減少し、腎臓から尿酸を十分に排出できなくなるため、血液中に尿酸がたまりやすくなります。そのため、尿酸値を適正な範囲に保つには、1日あたり少なくとも2リットルを目安に、こまめな水分補給を心がけることが大切です。ただし、水分補給には注意が必要で、糖分の多い清涼飲料水やアルコール類はかえって尿酸値に悪影響を及ぼす可能性があるため、避けるようにしましょう。水や麦茶など、無糖でカフェインの少ない飲み物が推奨されます。
痛風発作が起こったらどうしたらよいですか?
痛風発作が起こった場合は、まず患部を安静に保ち、氷や冷却材などで冷やして炎症を抑えることが重要です。このとき、無理に動かしたり、マッサージを行ったりすることは症状を悪化させる可能性があるため避けてください。できるだけ早めに医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。診断のうえ、消炎鎮痛薬(NSAIDs)やコルヒチンといった痛風発作の治療薬が処方されることがあります。また、発作の最中に尿酸値を急激に下げるような治療は、かえって症状を悪化させるおそれがあるため、尿酸値のコントロールについては必ず医師の指示に従ってください。
