血圧が高いと指摘された方へ
血圧とは、血液が血管の中を流れる際に血管の壁にかかる力のことで、「収縮期血圧(上の血圧)」と「拡張期血圧(下の血圧)」という2つの数値で表されます。健康診断で血圧が高めと指摘されても、その時点ですぐに「高血圧」と診断されるわけではありません。しかし、血圧が高い状態が続くと、動脈硬化や心疾患、脳卒中などのリスクが高くなる可能性があるため、早い段階での対策が大切です。血圧の数値は、体調や測定する環境、緊張状態などの影響で変動することがあり、1回の測定だけでは正確な判断ができない場合もあります。とはいえ、複数回の測定でも高血圧の傾向がみられる場合には、「本態性高血圧」や「二次性高血圧」などの状態が関係している可能性があるため、生活習慣の改善に加えて、必要に応じて医療機関での詳しい検査が推奨されます。ここのページでは、血圧のしくみや基準値、高血圧の原因、今後の対応方法についてわかりやすくまとめています。健康管理の参考にしていただければ幸いです。
高血圧について
高血圧は、血圧が基準より高い状態が続く疾患です。血圧は運動や食事、緊張などで変動するため、1回の測定だけで診断はされず、複数回の測定が必要です。血圧が高いと、心臓や血管に負担がかかり、動脈硬化の原因になります。さらに動脈硬化が進むと血圧がさらに上がりやすくなり、両者は悪循環を起こします。その結果、心筋梗塞や脳卒中、慢性腎臓病など、命に関わる疾患のリスクが高まります。最近では、女性の高血圧はやや減少傾向にありますが、男性は50代以降で増加がみられます。健診で高血圧を指摘された方は、放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。
血圧の基準値と高血圧
高血圧とは、収縮期血圧が140 mmHg以上、または拡張期血圧が90 mmHg以上の状態が継続している場合に診断されます。一度の測定ではなく、複数回の測定結果をもとに総合的に判断されます。以下は、診察室での血圧測定に基づいた血圧の基準値です。
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区分 |
収縮期血圧 |
拡張期血圧 |
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正常血圧 |
120 mmHg 未満 |
80 mmHg 未満 |
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高値血圧 |
130~139 mmHg |
80~89 mmHg |
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Ⅰ度高血圧(低度) |
140~159 mmHg |
90~99 mmHg |
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Ⅱ度高血圧(中等度) |
160~179 mmHg |
100~109 mmHg |
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Ⅲ度高血圧(重症) |
180 mmHg 以上 |
110 mmHg 以上 |
正常血圧
正常血圧とは、収縮期血圧が120 mmHg未満、かつ拡張期血圧が80 mmHg未満の範囲に収まっている状態をいいます。この血圧レベルは、心臓や血管の疾患の発症リスクが最も低いとされており、理想的な状態と考えられています。良好な血圧を維持するために、食生活の見直しや適度な運動、禁煙といった健康的な習慣を続けることが重要です。
高値血圧(境界域)
高値血圧とは、収縮期血圧が130~139 mmHg、または拡張期血圧が80~89 mmHgの範囲にある状態を指します。この段階では、まだ高血圧と診断される基準には達していませんが、将来的に高血圧へ進行する可能性が高いため、「境界域」と呼ばれることもあります。特に、肥満・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病に関わるリスク因子を持っている方は、より注意が必要です。このような状態では、早い段階からの食事・運動などの生活習慣の改善が勧められます。
Ⅰ度高血圧(低度)
Ⅰ度高血圧とは、収縮期血圧が140〜159 mmHg、または拡張期血圧が90〜99 mmHgの範囲に該当する状態をいいます。これは高血圧の初期段階にあたり、このレベルからすでに血管や臓器への負担が始まると考えられており、特に動脈硬化の進行や、心臓・腎臓機能への影響が懸念されます。まずは、塩分の摂取制限や体重管理、適度な運動など生活習慣の見直しが基本となります。加えて、血圧やリスクの程度によっては、医師の判断で降圧薬による治療が行われることもあります。定期的に血圧を測定し、その変化を把握することが、症状の進行予防につながります。
Ⅱ度高血圧(中等度)
Ⅱ度高血圧とは、収縮期血圧が160〜179 mmHg、または拡張期血圧が100〜109 mmHgの範囲にある状態をいいます。このレベルに達すると、動脈硬化がより進行しやすくなり、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患のリスクが明らかに高まるとされています。そのため、生活習慣の見直しに加えて、降圧薬を用いた治療が必要とされる段階です。症状がなくても放置せず、医師の診断と方針に基づいて、継続的に血圧を管理していくことが重要です。
Ⅲ度高血圧(重症)
Ⅲ度高血圧とは、収縮期血圧が180 mmHg以上、または拡張期血圧が110 mmHg以上の水準に達している、非常に重い高血圧の状態を指します。この段階では、心筋梗塞や脳卒中、腎不全などの重大な合併症を発症する危険性が極めて高く、速やかな対応が求められます。緊急性を要する場合もあるため、早急に医療機関で専門的な診察と検査を受けることが重要です。治療においては、生活習慣の徹底的な改善とあわせて、複数の降圧薬を組み合わせた治療が行われるケースもあります。
高血圧の種類
高血圧は、大きく「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2つに分類されます。
本態性高血圧
本態性高血圧とは、特定の疾患を原因としないタイプの高血圧で、代表的な生活習慣病のひとつです。遺伝的な体質に加えて、塩分の多い食事、運動不足、肥満、喫煙、過度の飲酒、精神的なストレス、加齢など、日常の生活習慣や環境要因が複雑に関与して発症すると考えられています。診断時に明確な疾患が見つからない場合でも、こうした複数の要因が長期間にわたって影響を及ぼすことで、血圧が持続的に高くなります。本態性高血圧は高血圧の中で最も多いタイプであり、全体の約90%を占めるとされています。
二次性高血圧
二次性高血圧とは、特定の疾患が原因となって発症するタイプの高血圧です。原因となる代表的な疾患には、腎臓の異常(腎実質性疾患や腎血管性高血圧など)や、血圧を上昇させるホルモンの過剰分泌(原発性アルドステロン症やクッシング症候群、褐色細胞腫など)が挙げられます。このような高血圧は、原因疾患を適切に治療することで血圧が正常化または改善する可能性が高いことが特徴です。そのため、若年での発症や急激な血圧上昇、薬が効きにくい場合などは、二次性高血圧の可能性を考慮して詳しい検査が行われます。
高血圧の合併症
高血圧は、多くの場合で自覚症状がないまま進行しますが、気づかないうちに全身の臓器へ負担をかけ、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。進行すると、心臓や腎臓などに過剰な負荷がかかり、動悸、息切れ、手足のむくみといった症状が現れることもあります。こうした症状は、すでに臓器障害や合併症が始まっている、または発症が間近であるサインであることが多く、注意が必要です。また、血圧が高い状態を放置すると、血管に常に強い圧力がかかり、血管の壁が徐々に硬くなり、もろく、狭くなっていきます。その結果、血管の多い臓器(脳、心臓、腎臓、目など)に十分な血流が届かなくなり、深刻な機能障害を引き起こすリスクが高まります。こうした変化は動脈硬化をはじめとするさまざまな合併症へとつながり、最終的には脳卒中や心不全、腎不全、眼の疾患、大動脈解離、末梢動脈疾患など、命に関わる重篤な疾患を招くことがあります。以下では、高血圧と深く関わる主な合併症について、詳しくご紹介します。
動脈硬化
動脈硬化とは、血管の壁が厚く硬くなり、弾力を失う状態を指します。通常、血管には柔軟性がありますが、高血圧が続くと血管に強い負担がかかり、動脈硬化が進行します。血管が硬くなると、血流の抵抗が増して血圧がさらに上がりやすくなり、高血圧と動脈硬化が互いを悪化させる悪循環に陥ります。動脈硬化は全身の血管に影響し、脳卒中、心不全、心筋梗塞、大動脈疾患、腎不全、眼底出血などのリスクを高めます。そのため、血圧と血管の状態を管理することが重要です。生活習慣の改善や定期的な健診、必要に応じた治療を通じて、合併症を防ぐことが可能です。
脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・一過性脳虚血発作)
高血圧によって動脈硬化が進行すると、脳の血管が狭くなったり詰まったり、あるいは破れることがあり、これにより「脳卒中」と呼ばれる脳の障害が引き起こされます。
脳卒中は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・一過性脳虚血発作(TIA)の4つに分類されます。この中でも一過性脳虚血発作(TIA)は、脳梗塞とよく似た症状が一時的に現れ、通常は数分から数時間以内に自然に回復するのが特徴です。ただし、TIAは脳梗塞の前ぶれとして現れることが多く、将来的に脳梗塞を発症する危険性が高い重要な警告サインと考えられています。
心疾患(心不全・狭心症・心筋梗塞)
高血圧は心臓に継続的な負担をかけるため、心筋が厚くなる「心肥大」を起こしやすくなります。この状態が長く続くと、次第に心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な血液を十分に送り出せなくなることで「心不全」を発症します。また、高血圧によって進行する動脈硬化は、心臓に酸素と栄養を送る冠動脈を狭めたり詰まらせたりする原因となり、その結果、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こすリスクも高まります。
腎障害(腎硬化症・慢性腎不全)
腎臓は血液をろ過して老廃物や余分な水分を排出する重要な臓器ですが、高血圧による動脈硬化の影響を受けやすく、血流が低下することで「腎硬化症」や「慢性腎不全」を引き起こす可能性があります。腎機能がさらに低下すると、体内の老廃物や水分を自力で排出できなくなり、最終的には人工透析が必要になるケースもあります。
目の合併症(高血圧性網膜症・眼底出血)
高血圧の影響で動脈硬化が進行すると、網膜に張り巡らされた細い血管にもダメージが及び、「高血圧性網膜症」や「眼底出血」などの目の異常を引き起こすことがあります。これらの状態が悪化すると、視力の低下や、場合によっては失明に至る可能性もあるため注意が必要です。
大血管疾患(大動脈瘤・大動脈瘤破裂・大動脈解離・下肢閉塞性動脈硬化症)
高血圧が続くと、大動脈に強い圧力がかかり、「大動脈瘤」や「大動脈解離」、さらには「大動脈瘤破裂」などの重大な血管障害を引き起こす可能性があります。また、下肢の動脈に動脈硬化が生じることで起こる「下肢閉塞性動脈硬化症」は、足の冷感やしびれ、歩行時の痛み(間欠性跛行)といった初期症状が見られることがあります。これらのサインを見逃さず、早めに医療機関を受診することが大切です。
高血圧の治療
高血圧の治療では、まず食事や運動などの生活習慣を整えることが基本となります。生活習慣の改善だけで血圧の管理が難しい場合は、薬による治療が併用されます。
軽度の高血圧であれば、生活習慣の見直しだけで血圧を正常に保てることもありますが、薬を使う場合でも生活習慣の改善は欠かせません。治療を継続していくためには、自分に合った、無理のない方法で取り組むことが大切です。
生活習慣の改善
精神的ストレスの解消
ストレスは血圧の上昇に深く関わる重要な要因のひとつです。そのため、趣味に時間を使う、音楽を楽しむ、軽めの運動を行うなど、自分に合ったリフレッシュの方法を日常生活に取り入れてみましょう。また、日々の予定にゆとりをもたせるなど、ストレスがたまりにくいスケジュールを心がけることも大切です。
十分な睡眠の確保
疲労や睡眠不足も、血圧の上昇に関係するといわれています。そのため、夜遅くまでの作業や不規則な就寝・起床はできるだけ避け、毎日できるだけ同じ時間に眠り、起きる生活リズムを整えることが大切です。また、日中も適度に休憩をとることで、心身の負担をため込まないよう意識しましょう。
喫煙や飲酒を見直す
喫煙や飲酒は血圧を上げる原因となるため、生活習慣の見直しが重要です。たばこは血管を収縮させ、動脈硬化を進めます。高血圧の方が喫煙を続けると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まるため、禁煙や節煙を心がけましょう。飲酒も、適量であれば問題ありませんが、習慣的な多量飲酒は血圧上昇や他の生活習慣病を引き起こす要因となります。体調や医師の指導に応じて、飲酒量を調整することが大切です。
血行の改善
体が冷えると血圧が上昇しやすくなることが知られています。そのため、寒い日は衣類を重ねる、脱衣所を暖かくしてから入浴するなど、体温を保つ工夫をしましょう。入浴には血管を拡張させて血流を促す働きがあるため、夏場であっても可能な限り湯船に浸かり、体をしっかり温めるのが効果的です。また、入浴後は体が冷える前に靴下を履くなど、保温を意識した行動をとることも冷え対策になります。なお、入浴時の温度や時間は体調や疾患によって適切な範囲が異なるため、医師の指示に従うようにしてください。
軽めの有酸素運動
ウォーキングや水泳、サイクリングなどの穏やかな有酸素運動は、血圧のコントロールに効果があるとされています。運動中の心拍数が1分あたり100〜120程度になる程度の軽い運動が適しており、1日30分以上を目安に、可能であれば毎日、最低でも週3〜4回は継続して取り組むことが望ましいです。激しい運動を行う必要はなく、自分の体力に合ったペースで、無理せず継続することが大切です。
食生活の改善
高血圧の改善には、塩分・カロリー・脂質を控えた食生活が基本です。これは他の生活習慣病の予防にもつながり、健康維持に役立ちます。とくに塩分のとり過ぎは血圧上昇の原因になります。日本人は平均で1日11~12gの塩分を摂っていますが、高血圧予防には男性8g未満、女性7g未満が目安とされています。無理なく減塩を続けるには、香辛料(唐辛子・胡椒など)やレモン、酢、ハーブ類を使って風味を引き出す工夫が効果的です。塩分を減らしても、味に満足感を得やすくなります。また、肥満がある場合は体重を適正に保つことが血圧の安定につながります。脂っこい食事は控え、野菜や海藻、きのこ類を中心にバランスよく、1日3食を規則正しくとることが大切です。
薬物療法

生活習慣の改善だけでは血圧のコントロールが不十分な場合には、薬による治療(薬物療法)が必要になります。薬を使って血圧を適正に保つことで、動脈硬化の進行や心臓・脳・腎臓などの合併症を防ぐ効果が期待されます。降圧薬にはさまざまな種類があり、それぞれ作用の仕方が異なります。医師は、患者様の年齢、血圧の程度、他の持病の有無などを考慮して、適切な薬を選んで処方します。場合によっては、複数の降圧薬を組み合わせて使うことで、より効果的に血圧を下げることもあります。なお、血圧が下がったからといって、自己判断で薬の量を減らしたり、服用をやめたりするのは非常に危険です。高血圧が再発・悪化するおそれがあるため、薬は医師の指示どおりに決められた時間に正しく飲むことが大切です。減薬や中止を検討する際は、必ず医師と相談して判断しましょう。
高血圧のよくある質問
血圧が高い場合は、どの診療科を受診すればよいですか?
高血圧の診察を受ける際は、まずは内科、または循環器内科を受診するのが一般的です。特に、健康診断で血圧の高さを指摘された方や、自宅で測定しても高い数値が続く方は、できるだけ早く医療機関で評価を受けることが重要です。血圧の状態や他の疾患との関係が疑われる場合には、腎臓内科や内分泌内科といった専門診療科に紹介されることもあります。
男性と女性で血圧に差があるのはなぜですか?
男女の血圧の違いは、ホルモンの影響や血管の柔軟性、年齢による変化などが関係しています。女性は、エストロゲン(女性ホルモン)の作用で血管がしなやかに保たれやすく、若い年代では血圧が低めに推移する傾向があります。しかし、更年期を迎える40代以降はエストロゲンが減少し、血圧が上がりやすくなります。そのため、60~70代になると、女性の高血圧率が男性に近づくこともあります。一方、男性は血管の弾力性が女性より早く低下しやすく、動脈硬化が進みやすい傾向があります。これは、成人以降の塩分や脂質の摂取増加も関係しています。こうした要因により男女で血圧に違いが見られますが、これはあくまで傾向であり、個人差も大きいため、年齢や性別に関係なく、血圧は定期的に測定し、必要に応じて医師に相談することが大切です。
血圧が高いときに頭痛がするのですが、どう対処すればいいですか?
血圧が急激に上昇すると、頭痛を引き起こすことがあります。とくに後頭部が重く感じる、ズキズキとした痛みがある、吐き気やめまいを伴う場合は、高血圧緊急症の可能性もあるため注意が必要です。こうした症状が現れたときは、すぐに医療機関を受診してください。高血圧緊急症とは、極めて高い血圧(収縮期180mmHg以上、拡張期120mmHg以上)に加え、脳・心臓・腎臓・眼などの重要な臓器にすでに障害が起きている状態を指します。命に関わるリスクがあるため、緊急の治療が必要です。また、普段から頭痛が続いている方や血圧が不安定な方は、症状と血圧の数値を記録しておくと、医師の診断や治療方針の決定に役立ちます。
水をたくさん飲めば、血圧は下がりますか?
水分をたくさん飲んだからといって、血圧が直接下がるわけではありません。体内の水分を適切に保つことは血液循環を保つうえで重要ですが、必要以上に水を摂取すると、心臓や腎臓に余計な負担をかけるおそれがあります。血圧を安定させるためには、適度な水分補給に加えて、塩分や脂肪を控えた食事、運動、禁煙などを含む生活習慣の見直しが欠かせません。
