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HbA1cが高い(糖尿病の可能性・境界型糖尿病)

HbA1c値が高いと指摘された方へ

健康診断で「HbA1c(ヘモグロビンA1c)の値が高い」と言われて、不安を感じていませんか?HbA1c値とは、過去1〜2か月間のおおよその血糖状態を反映する数値で、糖尿病やその前段階である「糖尿病予備群(境界型糖尿病)」の早期発見に役立つ重要な指標です。HbA1cの値が高いと指摘されたからといって、すぐに糖尿病と診断されるわけではありません。ただし、糖尿病またはその予備段階(糖尿病予備群)である可能性があるため、慎重な評価が必要です。このページでは、HbA1cの基本的な仕組みから基準値の目安、数値が高くなる背景、そして今後の対応方法まで、できるだけわかりやすく整理してご案内します。


HbA1c値について

HbA1c値とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンに、ブドウ糖(血糖)が結合した割合を示す指標です。血糖値が高い状態が長く続くと、ブドウ糖がヘモグロビンに付着する量も増加するため、HbA1cの数値も高くなります。赤血球はおよそ120日間(約4ヵ月)生きているため、HbA1cの値は過去1〜2ヵ月間の血糖コントロールの状態を反映しているとされています。そのため、HbA1cが高値を示す場合は、慢性的に血糖が高い状態が継続している可能性があることを意味します。

血糖値とHbA1c値の違いについて

血糖値は、検査時点の血液中のブドウ糖の濃度を示す数値で、空腹時や食後などタイミングによって変動します。一方、HbA1c値は、過去1〜2ヵ月の平均的な血糖状態を示す指標で、赤血球中のヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合から算出されます。血糖値は「その瞬間の数値」、HbA1c値は「長期間の血糖管理の状態」を把握するために使われ、両方をあわせて評価することで、より正確な判断が可能になります。


HbA1cの基準値と糖尿病

HbA1cの基準値

HbA1c(NGSP値)

判定区分

5.5%以下

正常範囲

5.6〜6.4%

境界型(糖尿病予備群)

6.5%以上

糖尿病型

HbA1cの値が6.5%以上であれば、糖尿病型と判定されます。ただし、HbA1cは赤血球の寿命や個人の体質、貧血・腎機能低下・異常ヘモグロビン症などの影響を受けることがあるため、他の検査結果とあわせて総合的に判断することが推奨されています。

糖尿病の診断基準

以下の4項目のうちいずれか1項目以上に該当する場合に「糖尿病」と判定されます。また、診断を確定するには原則として2回の確認(同日の別項目または別日での再検査)が必要です。

項目

基準値

空腹時血糖値

≧ 126 mg/dL

75g経口ブドウ糖負荷試験(2時間値)

≧200 mg/dL

随時血糖値

≧200 mg/dL

HbA1c値

≧6.5%

糖尿病予備群(旧:境界型糖尿病)の診断基準

糖尿病予備群(旧:境界型糖尿病)とは、まだ糖尿病と診断される基準には達していないものの、血糖値が正常よりも高い状態にあることを指します。この状態は、糖尿病への移行リスクが高いため、早期の生活習慣改善が重要とされています。原因としては、遺伝的な体質や加齢に加え、運動不足や食べ過ぎ、内臓脂肪の蓄積といった生活習慣の影響が大きいと考えられています。以下のいずれか1項目以上に該当する場合に「糖尿病予備軍」と診断されます。

項目

基準値

空腹時血糖値

110〜125 mg/dL

75g経口ブドウ糖負荷試験(2時間値)

140〜199 mg/dL

HbA1c値

5.6〜6.4%

糖尿病


HbA1c値が高くなる原因

HbA1c(ヘモグロビンA1c)の値が高くなる主な要因は、血糖値が長期間にわたって高い状態が続いていることです。このような慢性的な高血糖は、血糖を下げる働きをもつホルモン「インスリン」の分泌が不足している、あるいはインスリンの効き目が低下している(インスリン抵抗性)ことが原因となります。そして、高血糖状態が続くこと自体が、さらにインスリンの作用を低下させたり、膵臓に過剰な負担をかけるため、血糖値がさらに上がりやすくなるという悪循環に陥ることがあります。このような背景には、必ずしも疾患だけが関わっているわけではなく、以下のような生活習慣や体質に起因する要因もHbA1c値の上昇に関係しています。

食生活の乱れ

糖質の過剰摂取

糖質を過剰に摂取すると血糖値が急激に上がり、それに対応してインスリンが分泌されます。しかし摂取量が多すぎると、インスリンの分泌や働きが追いつかず、血糖値が高い状態が続きやすくなります。糖質を多く含む食品には以下のようなものがあります。

  • 主食(ごはん、パン、うどん、パスタなど)
  • 甘いお菓子(ケーキ、和菓子など)
  • 加糖飲料(清涼飲料水、甘いコーヒー・紅茶など)
  • 果物(特にバナナやブドウなど糖度の高いもの)

果物はビタミンや食物繊維が豊富なため適度な摂取が望ましく、種類や量に注意して取り入れることが大切です。

脂質の過剰摂取

脂質は体に必要な栄養素ですが、摂りすぎると体脂肪として蓄積されやすく、肥満や内臓脂肪の増加を招きます。これにより、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が進み、血糖値が下がりにくくなります。脂質を多く含む食品には以下のようなものがあります。

  • 揚げ物(とんかつ、天ぷら、唐揚げなど)
  • スナック菓子や洋菓子(クッキー、パイ、ドーナツなど)

これらは糖質も多く含むため、摂りすぎると血糖や体重の管理が難しくなる可能性があります。日常的に食べる頻度は控えるようにしましょう。

アルコールの影響

アルコールは飲み方によってはリラックス効果や血流改善などの良い影響が期待されますが、注意も必要です。

  • 酎ハイ、梅酒、果実酒などは糖分が多く、血糖値を上げやすいため注意が必要です。
  • アルコールには食欲を促す作用があり、つまみの内容によっては過剰なカロリー摂取につながることもあります。

血糖管理が必要な方は、糖質の少ない蒸留酒(焼酎、ウイスキーなど)を選び、つまみには野菜やたんぱく質中心の食事を心がけましょう。

肥満(特に内臓脂肪型肥満)

肥満になると、体内でインスリンが十分に分泌されていても、その効果が発揮されにくくなり(インスリン抵抗性)、血糖値が高い状態が続きやすくなります。特に、内臓のまわりに脂肪が多くつく「内臓脂肪型肥満」や、脂肪肝がある方は、インスリンの働きがさらに低下しやすく、糖尿病を発症するリスクが高まることが知られています。そのため、食事の見直しや運動による減量は、血糖コントロールの改善に有効であり、HbA1cの値を下げる効果も期待できます。医療機関でも、肥満がある方には減量を積極的にすすめています。

精神的ストレス

強い精神的ストレスや長期間にわたる睡眠不足は、体内のホルモン分泌や自律神経の働きを乱す原因となり、血糖値の上昇や食欲の増加を引き起こすことがあります。これにより、血糖を下げる働きを担うインスリンの効果が低下しやすくなり(インスリン抵抗性)、血糖のコントロールが不安定になる可能性があります。その結果、HbA1cの値が高くなる原因のひとつとなることがあるため、日ごろからストレスを適切に解消し、十分な睡眠時間を確保することは、血糖管理の面でも重要です。

遺伝

日本人を含むアジア系の人々は、欧米系の人種と比較して、インスリンを分泌する能力がもともと低い傾向があり、糖尿病を発症しやすい体質であるとされています。実際に、アジア人は欧米人と比べてインスリン分泌量が約半分程度であるという報告もあり、過食や運動不足などの影響を受けやすく、血糖コントロールが崩れやすいことが知られています。また、家族に糖尿病の方がいる場合は、そうでない方に比べて糖尿病の発症リスクが高いことがわかっています。特に、両親のどちらかが糖尿病の場合、その子どもが糖尿病になる確率が2〜3倍以上になるとされており、遺伝的な影響は無視できません。そのため、遺伝的な背景をもつ方は、HbA1cの値が高くなくても、早めに生活習慣を見直すことが重要です。

妊娠

妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンの働きが弱まり(インスリン抵抗性が高まり)、血糖値が上がりやすくなります。このような血糖変化が持続すると、過去1〜2ヵ月間の平均的な血糖状態を反映するHbA1cの値も上昇することがあります。特に、妊娠中に血糖値が基準を超えて高くなる「妊娠糖尿病」と診断された場合は、HbA1cの値が一時的に高くなることがありますが、多くは出産とともに改善します。ただし、妊娠糖尿病を経験した方は将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高まることが知られており、HbA1c値の経過を出産後も定期的に確認することが重要です。妊娠中のHbA1c値の評価には慎重さも求められるため、血糖自己測定や医師の指導のもとでの管理が基本となります。

妊娠糖尿病の診断基準

妊娠24~28週頃に行う75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)で、以下のいずれか1項目以上に該当する場合に「妊娠糖尿病」と診断されます。

項目

基準値

空腹時血糖値

≧ 92 mg/dL

75g経口ブドウ糖負荷試験(1時間値)

≧ 180 mg/dL

75g経口ブドウ糖負荷試験(2時間値)

≧ 153 mg/dL


血糖値に関係なくHbA1c値が高くなる原因疾患

異常ヘモグロビン症

異常ヘモグロビン症とは、遺伝的な変異によりヘモグロビンの構造や性質が通常と異なる状態を指します。このような異常は、自覚症状がほとんどなく進行することが多く、HbA1c検査で予期せぬ異常値が出ることによって初めて発見されることもあります。一部のタイプでは、重度の貧血や溶血性疾患を引き起こすことがあり、症状が現れる場合には医療的な対応が必要となります。また、異常ヘモグロビンの存在によってHbA1cの測定値に影響が出る場合があり、実際の血糖状態を正しく反映しないことがあるため、注意が必要です。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、全身の代謝が異常に高まる疾患です。代表的な疾患がバセドウ病になります。この状態では、動悸(脈が速くなる)、手の震え、体重減少、発汗の増加などの症状が現れることがあります。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、赤血球の代謝が活性化されて寿命が短くなるため、HbA1c値が実際の血糖状態よりも高めに測定されることがあります(偽高値)。そのため、血糖値とHbA1c値のバランスに違和感がある場合には、甲状腺機能も確認することが重要です。診断には血液検査での甲状腺ホルモン(FT3、FT4)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定が行われます。

腎不全

腎不全とは、腎臓の働きが著しく低下し、老廃物や余分な水分、電解質などを適切に排泄できなくなる状態を指します。腎機能が低下すると、血液中の尿素窒素(BUN)やクレアチニンなどの老廃物が体内に蓄積し、さまざまな代謝の異常が生じます。慢性腎不全では、赤血球の寿命が延びたり、尿毒素の影響でHbA1c測定に干渉が生じたりすることで、実際の血糖状態とは異なるHbA1c値(偽高値)が出ることがあります。そのため、腎不全のある方では、HbA1c値だけに頼らず、グリコアルブミン(GA)や1,5-AGなど他の指標を併用して血糖管理を行うことが推奨されます。


HbA1c値を下げる治療

食事療法

食事療法は、HbA1c値を下げるための基本的な治療のひとつです。血糖値の急上昇を防ぐためには、糖質の摂り方や食事内容に注意することが重要です。特に「低GI食品」を取り入れると、食後の血糖の上昇をゆるやかに抑える効果が期待できます。例として、玄米、全粒粉パン、そば、豆類、葉物野菜、きのこ類などがあります。また、野菜から先に食べる・ゆっくりよく噛む・1日3食を規則正しくとるといった食べ方や生活リズムの工夫も、血糖コントロールに役立ちます。さらに、糖質・脂質・たんぱく質のバランスを意識した食事を続けることが、HbA1c値の改善には欠かせません。極端な糖質制限や偏った食事は避け、専門家の指導のもとで無理なく見直すことが大切です。

運動療法

運動療法は、体内のブドウ糖を効率よく消費し、インスリンの作用を高めることで血糖値の改善に役立ちます。なかでも、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、筋肉による糖の取り込みを促進し、血糖を下げやすくする効果があります。さらに、筋力トレーニング(レジスタンス運動)を組み合わせることで、筋肉量の増加や基礎代謝の向上が期待でき、インスリンに対する感受性(インスリン感受性)も改善されます。一般的な目安としては、1回30分程度の運動を週に3〜5回行うことが推奨されています。ただし、体調や生活スタイルに合わせて、無理なく継続できる運動を取り入れることが大切です。また、食後30〜60分に軽い運動を行うことは、食後の血糖値上昇を抑えるうえで特に効果的とされています。

薬物療法

食事や運動といった生活習慣の改善だけでは、HbA1cが目標値に達しない場合には、薬による治療が必要になることがあります。内服薬には、さまざまな作用をもつタイプがあり、たとえば以下のようなものがあります。

  • インスリンの分泌を促進する薬
  • インスリンの効きを高める薬(インスリン抵抗性を改善する薬)
  • 糖の吸収や排泄を調節する薬

また、内服薬だけでコントロールが難しい場合には、GLP-1受容体作動薬(注射薬)や、状況に応じてインスリン注射が選択されることもあります。治療薬の種類は、HbA1cの数値、体格(BMI)、年齢、生活習慣、合併症の有無や内容などを総合的に考慮して、医師が個別に判断します。ただし、薬に依存するのではなく、あくまでも生活習慣の改善を土台としたうえで薬物療法を併用することが大切です。


HbA1c値の目標値

HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、過去1〜2か月の平均的な血糖の状態を示す指標であり、糖尿病の診断や治療評価に広く使われています。糖尿病には軽度から重度までさまざまな段階があり、HbA1cの値に応じた適切な管理が必要です。日本糖尿病学会では、合併症を防ぐ目的でHbA1c 7.0%未満を基本的な目標値と定めています。ただし、高齢の方や合併症・低血糖のリスクがある場合は、状況に応じて個別に目標値を調整することが望ましいとされています。

HbA1c値とリスク

HbA1c値

主な症状・状態

治療方針

6.5%以上

糖尿病の診断基準

無症状が多い

生活習慣の改善(食事・運動療法)

HbA1c 7.0%未満の維持が目標

8.0%以上

血糖値が高い

合併症のリスクが高まる

無症状が多い

生活習慣の改善

薬物療法

10.0%以上

血糖値が非常に高い早期の治療介入が必要

無症状~軽度

インスリン療法

入院

12.0%以上

著しい高血糖

緊急性のある合併症(ケトアシドーシスなど)の可能性あり

喉の渇き・頻尿・体重減少が見られる

インスリン療法

入院