生活習慣病について
生活習慣病は、食事や運動不足、喫煙、飲酒、ストレスなど、日々の習慣が影響する疾患の総称です。代表的なものに、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症(痛風)があり、初期は自覚症状が少ないまま進行することもあります。放置すると、心筋梗塞や脳卒中といった重い合併症を引き起こすリスクがあるため、早期の対策と継続的な管理が重要です。当院では、一人ひとりの生活に合わせた無理のない改善をサポートしています。気になる症状がある方は、ぜひご相談ください。
高血圧
高血圧とは
高血圧とは、安静時でも血圧が正常とされる値を継続的に上回っている状態を指します。血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際に血管の内側にかかる圧力のことで、気温、身体活動、精神的な緊張などによって日々変動します。高血圧は多くの場合、自覚症状が現れにくいため気づかれにくく、治療されずに放置されると、脳卒中、心筋梗塞、腎機能障害などの重大な疾患につながるリスクが高まります。そのため、早期の発見と継続的な血圧の管理が重要です。
高血圧の原因と種類
高血圧は、発症原因に応じて「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2つに分類されます。
本態性高血圧
本態性高血圧とは、明確な原因となる疾患が見つからないタイプの高血圧で、日本人の高血圧の約9割がこのタイプに該当します。遺伝的な要因に加え、以下のような生活習慣や環境因子が重なって発症すると考えられています。
- 塩分の過剰摂取
- 運動不足
- 肥満・体重増加
- 飲酒・喫煙
- 慢性的なストレス
- 家族歴(親族に高血圧の方がいる場合)
これらの要因は動脈硬化の進行や交感神経系の活性化などを通じて血圧を上昇させます。
二次性高血圧
二次性高血圧は、腎臓や内分泌系などの特定の疾患が原因で血圧が上昇する状態です。以下のような疾患が代表的です。
- 腎実質性疾患(慢性腎臓病など)
- 腎血管性高血圧(腎動脈狭窄など)
- 原発性アルドステロン症
- クッシング症候群
- 褐色細胞腫
- 甲状腺機能異常(バセドウ病・橋本病)
- 睡眠時無呼吸症候群
これらが疑われる場合は、まず基礎疾患の精査と治療が優先されます。特に若年者や急激に悪化した高血圧、治療抵抗性高血圧(薬が効きにくい場合)では、二次性高血圧の可能性を念頭に検査が行われます。
高血圧の診断
高血圧の診断では、医療機関で測定する「診察室血圧」と、家庭で日常的に測定する「家庭血圧」の両方が重要です。診察室では緊張などにより一時的に血圧が高く出ることがあるため、より実際の血圧状態を把握するには、家庭での測定値が参考になります。高血圧と診断される基準は、以下のとおりです。
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測定場所 |
収縮期血圧(上の血圧) |
拡張期血圧(下の血圧) |
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診療室 |
130mmHg以上 |
80mmHg以上 |
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自宅 |
125mmHg以上 |
75mmHg以上 |
血圧は一時的な要因でも変動するため、正確な状態を把握するには、決まった時間に毎日測定し、その結果を記録しておくことが重要です。特に起床後1時間以内と就寝前の測定が推奨されます。また、必要に応じて24時間自由行動下血圧測定(ABPM)が行われ、日中・夜間を含めた血圧の変動パターンを把握します。血圧は一般に朝に高く、夜間に低くなる傾向があるため、時間帯ごとの測定が診断の精度を高めます。
高血圧の検査
高血圧が疑われる場合、正確な診断と原因の特定のために、複数の検査が行われます。まずは血圧を繰り返し測定し、持続的に高い状態が続いているかを確認します。そのうえで、高血圧の背景に他の疾患が関与していないかを調べるため、主に以下の検査を実施します。
血液検査
■小道具を使用した医療イメージ写真です。血糊を使用しています。血液検査では、クレアチニンや推算糸球体濾過量(eGFR)によって腎臓の機能を評価します。また、ナトリウム・カリウムといった電解質のバランス、血糖値、脂質(LDLコレステロールや中性脂肪)などを測定し、生活習慣病の有無や臓器の状態を把握します。
尿検査
尿検査では、尿中のたんぱく質やアルブミンの量を調べることで、腎機能の異常や早期の腎障害がないかを確認します。
心電図検査
心電図検査では、心臓の電気的な活動を記録することで、左心室の肥大や不整脈の有無を確認し、心臓に高血圧による負荷がかかっていないかを評価します。高血圧性心疾患の早期発見に役立ちます。
胸部レントゲン検査
胸部レントゲン検査では、心臓の大きさや形、肺にうっ血や異常がないかを観察します。心不全や肺うっ血などの合併症を見つけるために行われる検査です。
眼底検査
眼底検査では、目の奥にある網膜の血管の状態を確認し、高血圧による血管の損傷(高血圧性網膜症)の有無を調べます。高血圧によって生じる全身の血管への影響を把握するために重要な検査とされています。
高血圧の治療
高血圧の治療は、血圧を適切な範囲にコントロールし、脳卒中や心臓疾患などの合併症を予防することを目的としています。基本的な方針としては、「生活習慣の改善」と「薬物療法」の両面からアプローチします。
生活習慣の見直し
- 食塩の摂取制限
- 栄養バランスの整った食事
- 定期的な運動
- アルコール摂取量の制限と禁煙
- 適正体重の維持
薬物療法
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合には、降圧薬を使用することがあります。主に以下のような薬剤が使われます。
- カルシウム拮抗薬
- アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
- アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
- 利尿薬
- β遮断薬
使用する薬剤の種類や組み合わせは、年齢、腎機能、心疾患や糖尿病の有無など、患者様の体調や持病に応じて選択されます。薬による治療を始めた後も、生活習慣の改善は継続が必要です。両方を続けることで、より安定した血圧の維持と合併症の予防につながります。
脂質異常症
脂質異常症とは
脂質異常症とは、血液中の脂質(LDLコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール)の値が基準範囲を逸脱している状態を指します。具体的には、LDLコレステロールや中性脂肪が高すぎる、またはHDLコレステロールが低すぎる場合が含まれます。LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞に運ぶ役割を担っていますが、過剰になると血管の壁に蓄積し、動脈硬化を引き起こす原因となります。HDLコレステロールは、体内に余ったコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをしており、動脈硬化の進行を抑える役割があります。そのため、HDLコレステロールが少ない状態が続くと、血管内にコレステロールが蓄積しやすくなり、動脈硬化のリスクが高まります。以前は「高脂血症」と呼ばれ、主に総コレステロールや中性脂肪の増加に着目していましたが、HDLコレステロールの低下も含めて評価する必要があることから、現在は「脂質異常症」という名称が用いられています。コレステロールは細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料として体に欠かせない物質ですが、その量やバランスが崩れると、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まります。脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、健康診断などによる定期的な検査が重要です。
脂質異常症の原因
脂質異常症は、日々の生活習慣と遺伝的な体質の両方が関与して発症します。生活習慣に関連する主な要因には、次のようなものが挙げられます。
- 高脂質・高カロリーな食事
- 野菜や食物繊維、ビタミン、ミネラルの摂取不足
- 運動不足に伴う体重増加・肥満
- アルコールの過剰摂取や喫煙習慣
とくに、飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪の摂りすぎは、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を増加させる要因として知られており、動脈硬化や脂質異常症のリスクを高めます。さらに、家族性高コレステロール血症のような遺伝的な要因をもつ方では、生活習慣に関係なく若いうちからLDLコレステロールが高くなりやすく、早期に脂質異常症を発症することがあります。
脂質異常症の種類
高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値が基準より高い状態を指します。脂質異常症の中でも最もよくみられるタイプであり、診断や治療の際の重要な指標になります。
低HDLコレステロール血症
HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値が基準を下回っている状態です。HDLは血管内の余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割を持っていますが、量が不足するとコレステロールが血管内にたまり、動脈硬化が進行しやすくなります。
高トリグリセライド(中性脂肪)血症
中性脂肪(トリグリセライド)の値が基準より高くなる状態を指します。このタイプでは、LDLコレステロールも同時に上昇する「混合型」のケースが多くみられます。中性脂肪の増加は、LDL値の上昇と関連することがあるため、両者をあわせて管理することが大切です。
脂質異常症の診断
脂質異常症は、空腹時に採血を行い、血液中の脂質の値を調べて診断します。次のいずれかに該当する場合、脂質異常症とみなされます。
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LDLコレステロール |
140 mg/dL以上 |
高 LDLコレステロール血症 |
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120~139 mg/dL |
境界域高LDLコレステロール血症 |
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HDLコレステロール |
40 mg/dL未満 |
低 HDLコレステロール血症 |
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Non-HDLコレステロール |
170 mg/dL以上 |
高 non-HDLコレステロール血症 |
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150〜169 mg/dL |
境界域高 non-HDLコレステロール血症 |
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トリグリセライド(中性脂肪) |
150 mg/dL以上 |
高トリグリセライド血症(空腹時) |
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175mg/dL以上 |
高トリグリセライド血症(随時) |
これらの異常がひとつだけ見られることもあれば、複数の脂質に異常がある混合型も存在します。特に中性脂肪が高い方では、LDLコレステロールも高くなりやすく、動脈硬化のリスクがさらに高まる可能性があります。
脂質異常症の治療
脂質異常症の治療は、まず食事や運動など生活習慣の改善が基本です。必要に応じて薬物療法を併用し、脂質異常の種類や合併疾患に応じて治療方針を調整していきます。
食事療法
まずは日々の食習慣を見直すことが基本です。揚げ物やスイーツなど脂質や糖質の多い食品は控えめにし、動物性脂肪の摂取量はできるだけ減らしましょう。たんぱく質は、肉類よりも魚や大豆製品を優先して取り入れると効果的です。また、常に「腹八分目」を心がけ、食べ過ぎを防ぐことも大切です。
運動療法
ウォーキングや自転車などの有酸素運動を日常に取り入れることで、HDLコレステロール(善玉)の増加や中性脂肪の減少に役立ちます。目安としては、1回30分程度の運動を週に合計150分以上行うことが推奨されます。心疾患などの持病がある方は、運動を始める前に医師へ相談してください。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは脂質のコントロールが不十分な場合、医師の判断で薬による治療が行われることがあります。使用される主な薬剤は以下のとおりです。
- スタチン系薬:LDLコレステロールを減らす
- フィブラート系薬:中性脂肪を減らす
- EPA製剤・ニコチン酸誘導体:HDLコレステロールを増やし、中性脂肪を減らす
薬の選択は、脂質異常症のタイプや併存する疾患(糖尿病・高血圧など)に応じて決定されます。薬を使用している間も、食事や運動といった生活習慣の見直しは引き続き重要です。
高尿酸血症・痛風
高尿酸血症・痛風とは
高尿酸血症とは、血液中の尿酸の濃度が基準値を超えている状態を指します。尿酸は、体内のプリン体が分解される過程で生成される老廃物で、水に溶けにくいため、血液中で結晶化しやすい性質があります。この尿酸結晶が関節に沈着すると炎症が起こり、「痛風発作」と呼ばれる激しい関節痛を引き起こします。痛風発作は足の親指の付け根に多くみられ、足首や膝に及ぶこともあります。尿酸値が高くても発作が起きないこともありますが、放置すると腎障害や尿路結石、動脈硬化などの合併症につながるリスクがあるため、早めの受診が大切です。
高尿酸血症の原因
高尿酸血症は、体内で尿酸が過剰に作られる場合や、腎臓からの尿酸の排泄がうまくいかない場合に起こります。特に、プリン体を多く含む食品(例:レバー、魚卵、干物、ビールなど)を大量に摂ると、尿酸の産生量が増加しやすくなります。そのほかにも、肥満や運動不足、アルコールの過剰摂取、脱水状態、野菜不足などの不適切な生活習慣が原因になることがあります。さらに、糖尿病や高血圧、慢性腎臓病などの基礎疾患も、尿酸の排泄機能に影響を与えることがあります。
高尿酸血症の検査・診断
高尿酸血症の診断は、血液検査で血清尿酸値を測定することによって行われます。一般的に、尿酸値が7.0mg/dL以上であると高尿酸血症と判断されます。ただし、痛風発作中は尿酸値が一時的に低下することがあるため、診断には症状が落ち着いている時期の測定が適しています。また、尿中の尿酸排泄量を測定することで、体内での尿酸の過剰産生が原因か、腎臓からの排泄低下が原因かを分類することが可能です。これにより、治療方針の決定に役立てられます。
高尿酸血症の治療
高尿酸血症の治療は、尿酸値を適正に保ち、痛風発作や合併症を防ぐことが目的です。まず生活習慣の見直しから始め、必要に応じて薬を使用します。治療法は、尿酸値や合併症の有無に応じて個別に調整されます。
生活習慣の改善
プリン体を多く含む食品(例:レバー、干物、ビールなど)は過剰に摂らないよう注意し、野菜や海藻類など、尿をアルカリ性に近づける食品を意識して取り入れましょう。また、肥満を防ぐためには、腹八分目を心がけて適正体重の維持に努めることが大切です。さらに、水分補給も重要なポイントです。尿酸は主に尿から排泄されるため、こまめに水分を摂取し尿量を確保することで、尿酸の排出を促進する効果が期待できます。
薬物療法
生活習慣の見直しだけでは尿酸値の改善が見られない場合には、医師の判断のもと薬による治療が行われます。治療薬の選択は、痛風発作の有無や腎機能・合併症の有無などを総合的に判断して決定されます。主に以下のような薬剤が使用されます。
- 尿酸生成を抑える薬(アロプリノール、フェブキソスタットなど)
- 尿酸の排泄を促す薬(ベンズブロマロン、ドチヌラドなど)
なお、痛風発作が起きている期間は、尿酸値を急激に下げる薬を使用すると症状が悪化することがあるため、この時期は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やコルヒチンなどで炎症や痛みを抑え、発作が落ち着いてから尿酸降下薬を開始します。
2型糖尿病
2型糖尿病とは
2型糖尿病は、インスリンを分泌する力が弱い「体質的な要因」と、食事や運動などの生活習慣の乱れによってインスリンが効きにくくなる「後天的な要因」が重なり、血糖値が高くなる疾患です。一般的に「糖尿病」といわれる場合は、この2型糖尿病を指すことが多く、日本で最も多くみられるタイプです。生活習慣の影響に加え、生まれつき糖尿病になりやすい体質が関係していることもあります。
脂肪肝
脂肪肝とは
脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過度にたまった状態を指します。肝組織のおよそ30%以上に脂肪が存在すると、脂肪肝と診断されます。主な原因としては、過剰な食事摂取や身体活動の不足など、日常生活における生活習慣の乱れが挙げられます。近年の日本では、見た目が痩せていても脂肪肝と診断される方が増えており、体型に関係なく注意が必要です。脂肪肝は、内臓脂肪型肥満を特徴とするメタボリックシンドロームや、2型糖尿病、脂質異常症といった他の生活習慣病と同時にみられることが少なくありません。こうした状態が続くと、動脈硬化が進行し、将来的に心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患の発症リスクを高める要因になります。また、脂肪肝を放置すると、肝臓に慢性的な炎症を起こす「脂肪性肝炎」に進行し、さらに肝硬変や肝細胞がんへと悪化するおそれがあるため、早期の発見と生活習慣の見直しが重要です。
脂肪肝の検査・診断
脂肪肝の診断は、血液検査と画像検査の結果をもとに総合的に判断されます。血液検査では、肝機能を示すAST、ALT、γ-GTPといった酵素の値に注目します。特に、ALTの値がASTより高い場合は、脂肪肝が疑われる傾向があります。画像検査では、腹部超音波(エコー)を用いて肝臓の状態を確認します。脂肪が蓄積していると、肝臓が白く映る「高エコー像」として認識されます。脂肪肝の確定診断には肝生検(組織検査)が有用とされますが、日常診療では通常、非侵襲的な検査で診断が行われます。血液検査で参照される代表的な酵素とその基準値の目安は以下の通りです。
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検査項目 |
基準値の目安 |
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AST(GOT) |
約7~38 IU/L |
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ALT(GPT) |
約4~44 IU/L |
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γ-GTP(γ-GT) |
男性:80 IU/L以下 女性:30 IU/L以下 |
これらの値が基準を超える場合は、脂肪肝だけでなく、肝炎(急性・慢性)、肝硬変、アルコール性肝障害などの他の肝疾患の可能性も考慮されます。
脂肪肝の原因
肥満
肥満になると、体内でインスリンの作用が低下しやすくなります。このインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)では、脂肪の代謝がうまく行われず、肝臓に中性脂肪が蓄積しやすくなります。その結果、脂肪肝の発症につながると考えられています。
過度な飲酒
過度な飲酒は、肝臓に中性脂肪がたまりやすくなる原因のひとつであり、「アルコール性脂肪肝」を引き起こす可能性があります。アルコールが体内で分解される際、肝細胞内の脂質代謝のバランスが崩れ、脂肪の蓄積が進行しやすくなります。特に、脂肪酸の分解が抑制される一方で中性脂肪の合成が活発になり、結果として肝臓に脂肪が蓄積していきます。
無理なダイエット
無理なダイエットは、筋肉量の減少を引き起こし、脂肪肝の原因となることがあります。
特に極端なカロリー制限を伴う食事では、筋肉が分解されやすくなり、基礎代謝量が低下します。基礎代謝が落ちるとエネルギー消費が減り、余分なエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなります。その結果、肝臓に脂肪がたまりやすい状態になり、「低栄養性脂肪肝」と呼ばれる脂肪肝の一形態を引き起こす可能性があります。
脂肪肝の症状
脂肪肝は、多くの場合、自覚症状がほとんど現れません。これは、肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるように、障害があっても症状が出にくい臓器であるためです。ただし、脂肪肝が進行すると、次のような体調の変化が見られることがあります。
- 慢性的な疲労感やだるさ(倦怠感)
- 頭がすっきりしない、集中力の低下
- 体重増加や内臓脂肪の増加などの肥満傾向
これらの症状は、脂肪肝によって肝機能が低下し、血液循環が悪化することで、全身の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなることが一因と考えられています。
脂肪肝の治療
脂肪肝は、生活習慣を早めに改善することで回復が見込める疾患です。そのためには、まず原因を正しく把握することが大切です。アルコールの摂取が影響している場合には、基本的に禁酒が必要となります。一方で、飲酒が関係していない非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の場合には、食事のバランスの見直しや運動不足の解消といった、生活全体の習慣改善が治療の中心となります。
食事療法
脂肪肝の改善には、食生活の見直しが欠かせません。何を食べるかだけでなく、食べ方や時間も重要です。朝・昼・夕の三食を規則正しくとり、朝食抜きや夜遅い食事は避けましょう。また、摂取カロリーを適正に管理し、肥満傾向のある方は体重の5〜10%減量を目指すと効果的です。糖質・脂質のとりすぎには注意が必要です。砂糖や揚げ物、脂身の多い肉などは控えめにし、野菜や海藻、きのこなどの食物繊維やビタミンを意識してとるようにしましょう。さらに、アルコールは肝臓に負担をかけるため、節酒または禁酒が勧められます。
量については医師の指導を受けながら調整することが大切です。
運動療法
脂肪肝の改善には、筋肉を増やして基礎代謝を高めることが効果的です。特に軽い筋トレでインナーマッスルを鍛えると、脂肪が燃えやすく太りにくい体づくりにつながります。あわせて、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を無理のない範囲で継続することも大切です。ただし、運動だけで摂取カロリーを消費するのは難しいため、食事とのバランスも意識する必要があります。
肥満症
肥満症とは
肥満症とは、BMI25以上の肥満に加えて、高血圧や2型糖尿病、脂質異常症などの健康障害を合併している状態を指します。体重が多いだけでは必ずしも疾患とはされませんが、こうした健康障害を伴う場合には「肥満症」と診断され、治療の対象となります。
肥満症の診断
BMIが25以上であり、かつ肥満に関連する11種類の健康障害のうち1つ以上を合併している場合に肥満症と診断されます。日本肥満学会が定める11の関連疾患には、以下のものが含まれます。
- 耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞など)
- 脳梗塞
- 月経異常・不妊症
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
- 運動器疾患(変形性関節症、腰痛など)
- 肥満関連腎臓病
肥満症の原因
生活習慣の乱れ
肥満症を引き起こす要因の中で、特に多くみられるのが生活習慣の乱れです。具体的には、脂肪分や糖質を多く含む食事を習慣的に摂取していることや、夜遅い時間帯に食事をとることが挙げられます。また、運動不足の状態が長期間続いている場合や、慢性的に睡眠時間が不足している場合も、肥満症の発症と密接に関連しています。
遺伝的要因
肥満症の要因のひとつに遺伝的な体質が挙げられます。たとえば、父親や母親が肥満傾向にある場合、その子どもも肥満になりやすい体質を受け継ぐ可能性があります。ただし、遺伝だけで肥満症が生じるわけではありません。多くの場合、食生活や運動習慣といった生活環境が影響を及ぼし、それらが組み合わさることで発症に至ると考えられています。
薬剤の影響
一部の薬剤の使用が、体重の増加につながることがあります。たとえば、向精神薬やステロイド薬、ホルモン製剤などを服用している方では、薬の副作用として体重が増えることがあり、このような状態は「薬剤性肥満」と呼ばれています。
内分泌疾患の影響
一部の内分泌系の疾患が、肥満の発症に関与する場合もあります。たとえば、甲状腺ホルモンの分泌が低下する「甲状腺機能低下症」や、副腎皮質ホルモンの過剰分泌による「クッシング症候群」、さらに排卵障害などを伴う「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」といった内分泌の異常が、代謝やホルモンバランスに影響を与え、結果として体重増加を引き起こすことがあります。
肥満症の症状
肥満症では、体重増加に加え、疲れやすさや息切れ、関節の痛み、多汗、むくみなどの症状がみられます。これらは日常生活を不便にし、活動量の低下やさらなる体重増加につながることがあります。
肥満症の検査
身体測定
身体測定では、BMI(体格指数)の計算や腹囲の測定を通じて、内臓脂肪型肥満かどうかを確認します。一般的に、男性で腹囲が85cm以上、女性で90cm以上ある場合は、内臓脂肪が過剰に蓄積している可能性があると判断されます。
体組成検査
体組成検査では、インピーダンス法(生体電気インピーダンス分析)を用いて、体内の脂肪や筋肉の量を測定します。この検査により、体脂肪率や筋肉量のバランスを把握し、肥満のタイプや体組成の状態を評価することができます。
血液検査
血液検査では、糖尿病や脂質異常症、高尿酸血症といった合併症があるかどうかを調べるほか、内分泌の異常(ホルモンバランスの乱れ)を確認する目的でも実施されます。これにより、肥満と関連する疾患の早期発見や、適切な治療方針の決定に役立てられます。
なお、当院では、一般的な血液検査の項目に加え、甲状腺ホルモンの即日結果返却が可能となります。
CT検査・MRI検査
CT検査・MRI検査では、体内にどの程度の内臓脂肪が蓄積しているかを、より正確かつ詳細に評価することができます。これらの画像検査により、腹腔内の脂肪分布を可視化し、肥満のタイプや重症度を把握する際に役立ちます。
CT検査やMRI検査が必要な場合には、連携する医療機関をご紹介いたします。
肥満症の治療
肥満症の治療は、単に体重を減らすことだけが目的ではなく、肥満に伴う合併症の予防や改善、そして日常生活の質(QOL)の向上を図ることも重要な目標とされています。治療は一度にすべてを行うのではなく、段階的に進めることが基本であり、まずは食事や運動などの生活習慣を見直すことから始まります。
食事療法
食事療法では、まず自分に合った1日のエネルギー摂取量を正しく設定することが基本となります。ふだんの身体活動量に合わせてカロリーの目安を決め、過度にならない範囲で摂取カロリーを調整していきます。また、栄養のバランスを考慮し、筋肉を保つためのたんぱく質や、満腹感を持続させやすい食物繊維を意識して取り入れることが効果的です。加えて、毎日の食事内容を記録することで、自身の食習慣を見直す手がかりになり、行動の改善につながりやすくなります。
運動療法
運動療法では、ウォーキングや水中での歩行などの有酸素運動を中心に、週に5回ほど、1回30分以上を目安に続けることが推奨されています。目安としては、「人と会話ができる程度」の軽度から中等度の強さで、無理なく継続することが重要です。また、筋肉を保つためには筋力トレーニングも取り入れると効果的で、基礎代謝の維持やエネルギー消費の促進にもつながります。
薬物療法
薬物療法では、マジンドールやGLP-1受容体作動薬といった飲み薬や注射薬が治療に使用されることがあります。これらの薬は、BMIが一定以上ある方や、肥満に伴って高血圧や2型糖尿病などの疾患を合併している方が対象となります。いずれの薬剤にも副作用のリスクがあるため、使用にあたっては医師の指導のもとで、安全性や適応を慎重に確認しながら進めることが大切です。
外科的治療
外科的治療では、日本では「スリーブ状胃切除術」が主な選択肢として行われています。この手術は、BMIが35以上で、食事や運動といった生活習慣の見直しや薬物療法によっても十分な効果が得られない場合に、治療の選択肢として検討されます。必要な場合には、連携する医療機関をご紹介いたします。
