TOPへ

いびき、睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる疾患です。主な原因は、上気道が狭くなることで、特に喉が狭い方や顎が小さい方に多く見られます。また、加齢や肥満によって気道周囲の筋力が低下したり、脂肪が沈着したりすることも、発症の要因となります。この疾患を発症すると、酸素不足や自律神経の乱れが生じ、眠りが浅くなります。その結果、日中の強い眠気や集中力の低下により、仕事や運転中の事故リスクが高まることがあります。さらに、状態が続くことで、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病につながる可能性もあります。いびきが大きい、朝の疲れや頭痛、夜間頻尿などがある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。気になる症状があれば、ぜひご相談ください。


睡眠時無呼吸症候群の種類と原因

睡眠時無呼吸症候群は、呼吸が止まる原因の違いにより、2つのタイプに分類されます。1つは、睡眠中に上気道が物理的に塞がれることで呼吸が止まる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」、もう1つは、脳の呼吸中枢からの指令が一時的に途絶えることで呼吸が止まる「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」です。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とは、睡眠中に空気の通り道である上気道が塞がれ、10秒以上にわたって呼吸が止まる状態を繰り返す疾患です。このタイプでは、肺に空気を送り込もうと胸や横隔膜は動いているにもかかわらず、気道が塞がれているために呼吸がうまくできません。主な原因としては、肥満、過度の飲酒、睡眠薬の影響などで喉の筋肉がゆるみやすくなることが挙げられます。また、顎が小さい方や、眠っている間に舌の根元が喉に落ち込む「舌根沈下」も、気道が狭くなる原因となります。さらに、小児ではアデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃が大きくなることによって、気道がふさがれ、無呼吸が生じることがあります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)

中枢性無呼吸症候群(CSA)とは、脳の呼吸中枢に異常が生じることで、呼吸の指令が一時的に止まり、無呼吸が繰り返される状態を指します。このタイプでは、気道が塞がれているわけではなく、脳からの信号が途絶えることによって呼吸の動きそのものが止まるのが特徴です。主に、心不全や脳卒中の既往がある方に多くみられますが、すべての原因が明確に解明されているわけではありません。


睡眠時無呼吸症候群の症状

眠っている間の症状(いびき・呼吸停止)

  • 睡眠中にいびきを繰り返しかくことが多い
  • いびきが一時的に止まった後、息を大きく吸って再びいびきが始まる
  • 睡眠中に「プシュー」という音を立てて息を吐くことがある
  • 呼吸のリズムが乱れ、息苦しさを感じる
  • 睡眠中に一時的に呼吸が止まる
  • 夜間に何度も排尿のために目が覚める(夜間頻尿)
  • 就寝中に大量の寝汗をかく
  • 睡眠中や目覚め際にむせるような咳き込みが起こる

など

起きた時の症状(頭痛・口の渇き)

  • 起床時に頭痛を感じることがある
  • 起床時にすっきり起きられず、目覚めが悪いと感じる
  • 睡眠時間は足りていても、ぐっすり眠れた実感がない
  • 起床時に口の中や喉が乾いていることが多い
  • 起床時に体がだるく、全身に重だるい疲労感が残る

など

起きているときの症状(日中の眠気・集中力低下)

  • 日中に我慢できないほどの眠気を感じることがある
  • 集中力が持続しない
  • 疲れが抜けず、常にだるさや体の重さを感じる

など


睡眠時無呼吸症候群の合併症

高血圧

高血圧とは、血管にかかる圧力が慢性的に高い状態で、睡眠時無呼吸症候群(SAS)によくみられる合併症のひとつです。SASの方の約半数が高血圧を併発しているとされており、その背景には無呼吸による低酸素や覚醒反応によって交感神経が刺激され、血圧が上昇しやすくなることが関係しています。とくに夜間の血圧が下がりにくくなる「夜間高血圧」や、一日中高めの「持続性高血圧」につながることもあります。高血圧は自覚症状が少ないまま進行し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めるため、早めの対応が大切です。なお、SASに伴う高血圧には、CPAP療法が血圧の改善にも効果的であることが報告されています。

糖尿病

糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)の値が慢性的に高くなる疾患であり、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な合併症のひとつとされています。SASでは、睡眠中に繰り返される無呼吸によって体内が低酸素状態となり、交感神経の過剰な活性化が起こることで、インスリンの分泌や作用が低下しやすくなります。その結果、血糖の調整機能が損なわれ、糖尿病の発症や進行のリスクが高まると考えられています。さらに、日常的にいびきをかく方は、いびきをかかない方と比べて糖尿病の発症リスクが約2倍に高まるという報告もあり、睡眠と代謝の深い関係性が注目されています。

糖尿病

心房細動(不整脈)

心房細動とは、心房が細かく不規則に震えることで、脈が不規則になり、動悸や息切れなどを引き起こす不整脈の一種です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の合併症としても知られており、無呼吸によって低酸素状態が繰り返されることで交感神経が過剰に刺激され、心臓に負荷がかかる結果、心房細動が引き起こされることがあります。また、心房細動を合併しているSASの患者様は、カテーテルアブレーション治療の効果が出にくい傾向があることも報告されています。これは、SASによって心房の構造や電気的性質に変化が生じ、治療後の再発率が高くなるためと考えられています。そのため、SASと心房細動の両方がある場合は、CPAP療法などによるSASの管理もあわせて行うことが、再発予防の観点から重要です。

不整脈

狭心症・心筋梗塞(虚血性心疾患)

狭心症・心筋梗塞(虚血性心疾患)とは、心臓の筋肉に酸素や栄養を供給する冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで、胸痛や心筋壊死を引き起こす疾患です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、この虚血性心疾患の発症リスクを高めることが知られています。SASでは、睡眠中に繰り返し無呼吸や低呼吸が起こることで、体内の酸素が不足し、交感神経が活性化して血圧が上昇します。その結果、血管に過剰な負担がかかり、動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化が冠動脈に及ぶと、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まるため、SASの早期発見と治療は、心血管疾患の予防にもつながります。

狭心症・心筋梗塞

心不全

心不全とは、心臓が十分に血液を送り出せなくなり、全身の臓器に必要な酸素や栄養を届けにくくなる状態を指します。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、この心不全のリスクを高めることが知られています。SASでは、睡眠中に呼吸が何度も止まることで体に酸素が行き渡らなくなり、そのたびに心臓に強い負担がかかります。これが続くと、心臓の働きが弱まり、心不全を引き起こす原因になると考えられています。また、心不全が疑われる方がSASを合併している場合には、SASの治療(CPAP療法など)を行うことで、心不全の症状が軽くなったり、心機能が改善したりすることが期待されます。

心不全

脳梗塞・脳出血(脳卒中)

脳卒中とは、脳の血管が詰まる・破れることで脳組織が障害を受ける疾患で、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重要な合併症のひとつです。SASのある方では、脳卒中の発症リスクが約3倍に高まると報告されています。これは、睡眠中の無呼吸・低呼吸によって血圧が上昇しやすくなり、耐糖能異常や脂質異常といった代謝異常が進行し、動脈硬化が促進されるためです。その結果、アテローム血栓性脳梗塞や脳出血などのリスクが増加します。また、SASの患者様では心房細動が起こりやすく、これにより心原性脳塞栓症を発症するリスクも高まると考えられています。


睡眠時無呼吸症候群の検査

簡易PSG検査(簡易検査)

簡易PSG検査とは、自宅で就寝中の呼吸状態や血中酸素濃度、脈拍などを測定することで、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性を評価する検査です。この検査では、専用の装置を装着して一晩眠ることで、無呼吸や低呼吸の回数、酸素飽和度の変動、心拍数などの情報が記録されます。自宅で実施できるため身体的な負担が少なく、SASが疑われる方に対するスクリーニングとして広く用いられています。

終夜PSG検査(精密検査)

終夜PSG検査とは、簡易検査で睡眠時無呼吸症候群の可能性が示唆された方に対して、より詳しく状態を把握するために行う精密検査です。この検査では、睡眠中の呼吸状態に加えて、脳波、眼球運動、筋電図、心電図、血中酸素濃度などを総合的に測定し、無呼吸や低呼吸の有無・重症度を詳しく評価します。検査は、ご自宅で実施できるタイプのものに加え、より詳細なデータを取得する目的で、1泊入院による検査にも対応しています。入院検査をご希望の場合は、当院から連携している高度医療機関をご紹介いたします。


睡眠時無呼吸症候群の治療

CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)

CPAP療法とは、睡眠時無呼吸症候群の治療法のひとつで、就寝時に専用の装置を使って鼻にマスクを装着し、気道に一定の空気圧をかけて閉塞を防ぐ方法です。主に、中等症から重症の閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の方に対して用いられます。この治療を継続することで、無呼吸や低呼吸の改善に加え、いびきの軽減、夜間の血圧コントロール、日中の眠気の改善といった効果も期待できます。

マウスピース療法

マウスピース療法とは、就寝時に「スリープスプリント」と呼ばれる専用のマウスピースを口に装着し、下あごを前方に移動させて気道を広げることで、呼吸の通りを良くする治療法です。この方法は、主に軽度の閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療に用いられます。治療により、睡眠中の無呼吸やいびきの軽減が期待できます。ただし、マウスピースは患者様の歯列や顎の形に合わせて個別に作製する必要があるため、近隣に対応可能な歯科医院がない場合は、当院から適切な医療機関をご紹介いたします。

手術療法(扁桃摘出、鼻中隔矯正など)

手術療法では、睡眠時無呼吸症候群の原因として、扁桃やアデノイドの肥大、鼻中隔のゆがみ(鼻中隔湾曲症)などが認められる場合に、それらを改善する手術(扁桃摘出術、アデノイド切除術、鼻中隔矯正術など)が検討されます。これらの手術によって上気道の通気性が改善され、無呼吸やいびきの症状の緩和が期待されます。なお、当院では手術には対応していないため、必要と判断された場合は、連携する専門の医療機関をご紹介いたします。